「沖縄には内発的発展の大きな可能性」財政学・環境経済学の第一人者、宮本氏が復帰50年で講演 「米軍基地は発展の妨げ」指摘


社会
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宮本憲一氏

 財政学・環境経済学の第一人者で、沖縄の自治や経済開発の在り方でも多くの提言をしてきた宮本憲一氏(92)が25日、日本環境会議と沖縄環境ネットワーク主催のシンポジウムに出席し、「沖縄の本土復帰50年を思う」と題して講演した。復帰後の沖縄像を巡って屋良朝苗・琉球政府主席らと交わした議論を振り返りながら、変容する政府の沖縄政策などを指摘した。講演の内容を紹介する。 (与那嶺松一郎)

 米統治時代の1969年3月に最初の沖縄調査で訪れた。基地の中に沖縄があるという状況に衝撃を受けた。劣悪だった福祉の水準を全国並みに引き上げるための経済開発が沖縄の人たちの重要なテーマになっていた。

 私たちは、基地は経済発展の阻害要因であり、基地と経済は一体で考える問題だとして復帰後の開発の在り方を提案した。琉球政府は長期経済開発計画で重化学工業化を目指したが、本土の後追いではなく、沖縄が持つ自然・文化・歴史に基づいた開発であるべきだとも提起した。

 71年の国会に琉球政府の屋良朝苗主席が出した建議書は地方自治権の確立、反戦平和の理念を貫く、基本的人権の確立、県民本位の経済開発がうたわれた。今読んでも重要な内容だ。

 復帰後も米軍基地は産業や都市の発展を妨げている。軍用地料は50年で7倍。返還要求し産業に活用する意欲はわかず、返還されても環境重視の都市計画を困難にする。

 復帰から50年を経てもまだ国主導の振興法が必要というのは異常だ。内発的発展が弱く国の財政政策に依存していることを県も企業も深刻に考えないといけない。振興法への依存が沖縄の自治をゆがめ、自治の確立が実現しない原因となる。

 今の政府予算は、防衛省から沖縄への支出が内閣府に匹敵するほど増大している。沖縄の経済自立より日米軍事基地の強化に重点が置かれる。沖縄予算の安保重視への変化がはっきりしている。

 世界は三つの重大な危機を抱えている。地球環境の問題、感染症のパンデミック(世界的大流行)、ウクライナ戦争だ。世界の重大危機と沖縄の問題は共通している。50年かけて実現できなかった沖縄の心を改めて高く掲げてほしい。

 温暖化は、食料もエネルギーも地域における自給率を高めることで解決するのが正攻法だ。自然環境に恵まれる沖縄には内発的発展の大きな可能性がある。

 沖縄戦を繰り返すなという主張が沖縄から出ているように、ウクライナ戦争は沖縄の危機を呼び起こす問題だ。今のまま日米軍事ブロック化を強化すれば、沖縄が再び戦場になることは避けがたい。ならば日本は中国との関係を友好的な交流に戻すことが必要だ。沖縄戦を二度と起こさないという思いは日本人全体の決意でないといけない。

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 みやもと・けんいち 1930年、台湾台北市生まれ。大阪市立大名誉教授、元滋賀大学長。四日市ぜんそくを初めて紹介し、公害問題の解決に尽力した。復帰前から沖縄振興や環境保全、基地問題について積極的に提言してきた。2017年に琉球新報賞受賞(沖縄振興・自治功労)。