【記者解説】下地氏「第三極」で浸透狙う 自民は一本化へ調整の可能性も<9・11沖縄県知事選>


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米ホワイトハウス前で出馬表明する下地幹郎氏(動画投稿サイト「YouTube」から)

 前衆院議員の下地幹郎氏が9月の県知事選へ出馬を表明したことで、事実上の一騎打ちと目されていた構図が一変する。下地氏は「第三極」として、「オール沖縄」が支援する現職の玉城デニー氏、自民党が擁立する佐喜真淳前宜野湾市長の間に割って入り、玉城県政と自公政権のいずれも支持しない層の受け皿として浸透を狙う。

 主要争点となる米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡って下地氏は、現在埋め立てが進む辺野古側のみを認めた上で、軟弱地盤がある大浦湾側での工事阻止を掲げた。普天間飛行場の危険性除去については、かねてから持論とする馬毛島の活用を唱える。軟弱地盤の影響で政府が推し進める工事の完成自体が不透明さを増す一方で、玉城県政も建設阻止に向けて有効打を打てない現状が続く中で、下地氏の主張は「落としどころ」として一定の理解を得る素地がある。

 衆院解散がなければ、次の国政選挙は3年後にしかない。下地氏の影響下にある県議会・地方議会議員はいるものの、昨年の衆院選で国会議員バッジを失ったため、政治力を発揮する場面はかなり限定される。今回の知事選出馬で、県内での政治的影響力を保持したいとの考えもありそうだ。

 昨年の衆院選沖縄1区では、下地氏の自民党復党を求める複数の有力企業でつくる「保守合同の会」が下地氏を支援。ただ今回は「大義名分がない」(同会関係者)との声があり、同様の支援体制は築けない見通しだ。後援会組織を核にし、SNSなどを駆使しながら訴えを浸透させる戦略を描く。

 保守票分散が見込まれることから、オール沖縄は静観の構えを見せる一方で、自民からは「一本化」に向けた調整の動きが出てくるとみられる。下地氏は出馬表明の中で調整には応じない考えを示したが、各方面から「条件次第ではないか」との指摘があり、告示日までの動向が焦点となる。
 (大嶺雅俊)