志多伯棒術、世界に挑戦 伝統行事の担い手が競技へ 「自分の実力試したい」神谷尚希さん 沖縄空手世界大会出場


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棒術の稽古に励む神谷尚希さん=八重瀬町の志多伯公民館

 沖縄県八重瀬町の志多伯獅子舞棒術保存会の神谷尚希さん(45)が、第2回沖縄空手世界大会県予選の古武道(棒)成年II男子部門で最高得点を取り、8月1日に県内で開幕する第2回沖縄空手世界大会に出場する。競技の空手大会は、道場に通う選手の出場が一般的だが、尚希さんは保存会で地域の伝統行事として棒術を身につけてきた。大会出場は今回が初めてといい「自分の実力でどこまでいけるか試したい」と意気込む。

 八重瀬町志多伯では法要周期と同じ時期に豊年祭を実施し、村の守り神といわれる「獅子加那志(しーしがなし)」の舞や、棒術などを披露する。保存会が中心となって継承し、県外や海外公演も実施するなど活動の幅を広げている。

 尚希さんは小学校のころから保存会の活動に参加し、行事がある度に棒術や獅子舞の稽古に励んできた。

 師匠で保存会会長の神谷政光さん(72)から大会出場を勧められ、出場を決めた。政光さんは「普段の練習に追加して教えれば、ある程度戦える力は持っていると思った」と話す。

 出場決定後は猛特訓が始まった。普段稽古している棒術は、行事に間に合わせた練習のため、競技としての本格的な動作までは習得していなかった。粘るような動きの「ムチミ」や立ち方など、細かい動作を見直した。

 尚希さんは「一つ一つの所作に大きく違いがあり難しいが、勉強になる」と話す。予選大会では「周氏の棍」と「朝雲の棍」を演武した。

 政光さんは「普段はどうしても簡単な動きしか教えないが、立派に(型を)継承させていく必要がある」と語る。本格的な技の習得が、地域の棒術継承にも役立つと意義づける。

 本戦に向けて尚希さんは「大会に出ることに意味があると思う。先生から習ってきた型をぶつけたい。将来的には子どもたちにも声をかけて後継者づくりにも取り組みたい」と話した。

(中村優希)