至芸披露、故郷に錦 宮城幸子が名護で「ふるさと公演」 人間国宝認定記念


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 琉球舞踊真踊流の宮城幸子の「琉球舞踊立方」人間国宝認定を記念した舞台「真踊りの道 ふるさと公演」(主催・同実行委員会、琉球舞踊真踊流)が7日、名護市民会館大ホールで開かれた。名護市(旧羽地村親川)出身の幸子をはじめ、北部にゆかりがある舞踊家や地謡らが、全11演目を披露した。幸子は、独舞2題を通じて至芸を披露し、郷土に錦を飾った。

「稲まづん」を踊る宮城幸子=7日、名護市民会館大ホール
「美童ナークニー」を踊る幸子

 幕開けは「かぎやで風」を、北部の出身者や北部に道場がある親泊興照、比嘉美好、島袋君子、眞境名結子、比嘉睦江が踊り、地謡が斉唱した。「若衆ゼイ」「かせかけ」「前の浜」の後、「しょんどう」では醜女の所作に笑いが起きた。

 1部のトリは幸子による「稲まづん」(1962年、真境名佳子創作)の独舞。稲穂を手に、豊かな稲の実りを表現した踊りに、観客は北部の風景を重ね、静かに見入った。

 2部は「松竹梅鶴亀」から始まった。幸子は羽地中学校時代に、「松竹梅」の梅役で踊ったことをきっかけに、琉球芸能の世界に進んだ。ふるさと公演では、梅役を娘の宮城りつ子が務めた。かつての幸子を思わせる立ち姿が観客を引きつけた。続いて幸子が曲を紹介し、創作にも立ち会った「宮城くわでぃさ」(1957年)や、「与那国のマヤー小」と、佳子の創作舞踊が踊られた。

宮城りつ子(中央)らによる「松竹梅鶴亀」

 最後は羽地の景色や人情が描かれた「美童ナークニー」(1991年、佳子振り付け、上原直彦作詞)を幸子が独舞で披露した。2曲構成で、最初の「ナークニー」では、平松が迎えてくれる故郷への道や和やかな島の風など、歌詞が描く世界を曲に乗せて豊かに表現した。恋人への思いを歌った「かいされー」では、時に花染手巾にそっと手をやり、少女のような微笑をたたえて踊った。

 地謡は歌三線が比嘉康春、新垣俊道、仲村逸夫。箏は赤嶺和子、笛は仲田治巳、胡弓は森田夏子、太鼓は比嘉聡。

 舞台を鑑賞した仲村和子さん(68)=東村=は「北部は『羽地ターブックヮー』とも言われる田園風景が広がる場所。『稲まづん』では、稲作を手伝った幼い日々が思い出された。踊りは所作がしっとりとして、すばらしかった。北部出身の方が多く出演していることもうれしい」と笑顔を見せた。

 公演を終えた幸子は「つい緊張してしまった。(舞台を)皆さんが一生懸命見てくださっていて、胸にジンと響くものがあった。踊っていて、先達の技のすごさを再確認した。皆さんに喜んでもらえるような踊りをお目にかけられるよう努め、次の世代に技を伝えていきたい」と話した。
 (藤村謙吾)