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心の潤いをくれる物づくり<伊是名夏子100センチの視界から>130


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イラストも描き、手作りした結婚式の招待状

 私はものづくりが大好きな子どもだった。編み物はカギ編み、棒編みの両方で人形や帽子を作ったり、きらきら光るビーズでブレスレットやストラップ、羊毛からフェルト人形や靴を作ったり。紙をすいたり、ハートや星のパンチとピンキングハサミでペーパークラフトをしたり。デコパッチコラージュもしたし、マーブリングでシャツも染め、刺しゅうもした。季節に合わせ、ハマグリ貝でひな人形を作ったり、松ぼっくりでクリスマスリースやツリーも作ったりした。アロマオイルでバスボムやキャンドルも作った。だから自分の結婚式の招待状や座席表もすべて手作りした。

 30年前は百円均一などなかったから毎週のように手芸品店に通い、時にはホームセンターに行くのも楽しかった。材料を眺めているだけでワクワクしたし、作り方の見本例にどんなアレンジを加えて、より自分好みのものを作ろうかと考えるのが楽しかった。

 ものづくりは時間がかかるし、作業する場所も必要で、材料をしまう場所も必要。いろいろな意味で余裕がないとできない。だから子どもができてこの10年、ほとんどできなかった。今年こそはクリスマス飾りを作ろうとも思って、フェルトを出したら「一緒にやる」と子どもに言われ、自分の作りたいものを作る時間が消え、子どものサポートに終わった。材料を子どもが取れる場所に置いていたら、紙やテープがすぐになくなり、はさみもなくなった。邪魔をされるのが嫌でほとんどしなくなったし、作りたいと思う気持ちすらなくなっていた。一緒に作ることを楽しめたら良かったのかもしれない。

 しかし先日、子どもがキャンプ合宿に行っていた一人の時間に、友だちの誕生日カードを作ってみようかな、と思いついた。使わなくなったカレンダーにマスキングテープでコラージュして、クレパスで絵を描いただけのもの。思いつくままに手を動かし、熱中した。できあがったものを何度も眺め、次に作る時のアイデアも湧いてきた。ものづくりって楽しいだけでなく、達成感があると気づいた。心に潤いを与えてくれるこんな時間を忘れていたし、取り戻したいと思った。

 今の環境ではなかなか気軽にものづくりができないけれど、月に一回、数時間でも確保して、ただただ思いつくままに手を動かし、好きなものを生み出す時間をつくりたい。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。