沖縄県内で牛乳不足が深刻 離農相次ぎ乳牛100頭減 スーパー品薄、給食は加工乳に


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県内生乳の不足を告げる小売店の通知=8日、那覇市内

 沖縄県酪農農業協同組合加盟の酪農家が所有する乳牛が前年比100頭減の2443頭となり、県産牛乳の生産が減少している。乳業メーカーや学校給食への供給が不足する事態になっている。同組合によると、2021年度の年間生乳生産量は1万9219トンで、10年前の11年度と比べて18%減少。22年度も8月末時点で前年同期の数値を7%下回る7556トンと低下している。関係者は「どうにか状況を打破したいが、生産コストの上昇が飼育頭数の削減や離農に追い打ちをかけている」と危惧する。

 県では21年度に4戸が相次いで廃業し、22年6月にも新たに1戸が離農。8月末時点の酪農家戸数は48戸で、1974年以来最少となった。組合によると、2020~21年にかけて新型コロナウイルスの感染拡大を受けて学校がたびたび休校したことで、給食用牛乳の供給が大幅に減退。一方で、昨今はロシアのウクライナ侵攻や円安によって飼料価格や輸送運賃などの生産コストが高騰し、農家の負担が増大した。牛乳は需給バランスの均衡が難しいこともあり、多くの酪農家が経営の先行きを不安視し、廃業や飼育頭数の削減に踏み切っているという。

 生乳不足を受け、県内のスーパーや小売店では今月初めから牛乳製品が品薄や欠品となっているほか、一部の学校では給食用の牛乳を加工乳に切り替えて提供している。組合関係者は「乳牛は暑さに弱く、例年この時期は牛乳の生産量が減少するが、今年は頭数も少なく状況は輪をかけて深刻だ。改善に向けて対策を模索したい」と述べた。

 大手乳業メーカーの担当者も「県内の生乳は15年以上前から逼迫(ひっぱく)し、購入したい分量が確保できていない」と吐露する。小売店などで品薄が相次いでいることについては「なるべく早く解決できるように努めている」と述べ、理解を求めた。 (当銘千絵)