県産生乳、10円値上げ 11月から、小売への転嫁公算大


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 酪農家から生乳の販売を委託されている県指定生乳生産団体の県酪農農業協同組合が、取引する乳業メーカー3社のうち2社と牛乳の原料となる生乳の価格(飲用乳価)を1キログラム当たり10円引き上げることで合意したことが9日、分かった。今後、残る1社との間でも交渉を進めていく。乳価は年1回決めるのが通例だが、飼料価格の高騰を受けて異例の期中改定となった。11月1日出荷分から適用する。乳価の改定に伴い、県内で流通する牛乳など最終製品の販売価格も引き上げられる公算が大きい。

 県内における乳価の改定は2013年以来初めて。当時は1キロ当たり3円引き上げた。

 乳価の期中改定に向けた動きは全国にも広がっている。背景には、酪農家を取り巻く経営環境の急激な悪化がある。ロシアによるウクライナ侵攻の影響に円安が重なり、配合飼料など生産コスト全般が高騰。生乳価格への転嫁は喫緊の課題となっていた。

 同組合の担当者は「乳価が長年据え置きだったこともあり、県内では将来を不安視した酪農家の廃業や飼養頭数の削減が相次いでいた。価格改定が少しでも農家の負担軽減につながってほしい」と述べた。

 ある乳業メーカーの関係者は、酪農家の苦境に一定の理解を示す。一方で、「乳価引き上げに伴う最終製品の値上げにより、県外から安く入ってくる製品との競合が激化し、消費量が落ち込む懸念がある」と指摘し、慎重に対応を検討したいと述べた。
 (当銘千絵)