岸田文雄首相は22日、新型コロナウイルスの水際対策について、10月11日から入国者数上限を撤廃し、訪日客に対して短期滞在ビザの取得免除や個人旅行を解禁すると表明した。観光支援策「全国旅行割」を始めることも明らかにした。県内の観光関係者は、インバウンド(訪日外国人客)と国内客両方の需要拡大を期待する。一方でレンタカーの車両不足や観光産業の人手不足など、供給面での課題を指摘する声も出た。
立て直しへ「行政支援を」
コロナ禍以前の2018年度、沖縄への入域観光客数1千万人のうち300万人をインバウンドが占めた。しかし2020年3月に那覇空港を発着する国際線の全便が運休して以降、2年以上にわたってゼロが続いた。
沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「ようやく水際対策が本格的に緩和される。台湾、韓国といったメインのマーケットは動き出すだろう。タイやシンガポールなど東南アジアも各航空会社と協議していきたい」と話した。
レンタカーの車両不足やホテルなどの人手不足が問題となっていることについて「増加する国内客、海外客をどう受け入れていくかは難しい問題だが、観光客が戻ることで活性化することは間違いない。行政の支援が見えてこないのは不安だが、追い風をうまく捉えて知恵を働かせて乗り越えたい」と話した。
コロナ前は約3割がインバウンドだったというホテルパームロイヤルNAHA国際通りの高倉直久総支配人は「航空路線が回復していないので一気に増えるとは思っていないが、入国者数の上限がなくなるのは円安と合わせて武器になる」と受け止めた。外国人客は個人旅行が多く「那覇のホテルにとっても期待が高まる」と希望を寄せた。
沖縄ツーリストの東良和会長は、全国旅行割の開始について「待ちに待っていた。ブロック割は沖縄にとって意味がなかった。初めて全国の需要を期待できる」と評価した。
一方で、水際緩和も含めた今回の対応で、観光産業がすぐに回復するわけではないとくぎを刺す。「観光はこの2年半、栄養失調の状態だったのにいきなり100メートル走を走れと言われている。緩和して終わりではなく、体力が戻るまでいかに国、県が伴走して支援していくかが重要だ。これからがスタートだ」と話した。
(沖田有吾、與那覇智早)