【識者談話】北朝鮮の弾道ミサイル発射の狙いは 米朝の対話再開が一番重要 布施祐仁氏(ジャーナリスト)


社会
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布施 祐仁氏

 北朝鮮は南北首脳会談、米朝首脳会談が行われた2018年、弾道ミサイル発射実験を行わなかった。一時は北朝鮮が核実験場の関連施設を爆破するなど非核化に向け積極的な行動をとったが、米朝協議は思うように進展しなかった。状況が進展しないことへのいら立ちが北朝鮮にはあり、ここにきて弾道ミサイル発射実験を相次いで行い、核実験もしかねない動きになってきた。今回のミサイル発射も、日本に向けたものではなく、米国を再び交渉に引っ張り出すことを狙ったものだろう。

 日米韓で対応を協議し、国連安保理での制裁強化や抑止力を高めるという話が出ているが、一方的な制裁や抑止力の強化では北朝鮮の挑発的な行動を止めることは難しい。互いに角を突き合わせる現状では緊張は高まるばかりで、対話によって緊張緩和の方向に持っていかないと北朝鮮のミサイル発射、核開発は止まらないだろう。もう一度、18年に確認した朝鮮半島の非核化と、朝鮮戦争を正式に終結させて恒久的な平和体制を構築するという二つの大きな目標に向けて米朝が対話と努力を再開することが一番重要だ。

 一方、万が一戦争に至ってしまった場合、北朝鮮は米国本土ではなく、まずは一番近い日本をミサイルで攻撃するだろう。米軍の作戦拠点になる在日米軍基地を真っ先に狙うことは北朝鮮も公言している。米軍基地が最も集中する沖縄もミサイル攻撃を受ける可能性が高い。北朝鮮はすでに核兵器を保有しており、それが使われれば甚大な被害が避けられない。日本としては、戦争だけは絶対に起こさないよう、外交努力に全力を尽くすべきだ。