筋肉量を血液データで推定 ちゅうざん病院の吉田医師が特許を取得 低栄養を早期発見、予防を目指す


社会
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特許証を持ち笑顔を見せるちゅうざん病院副院長の吉田貞夫医師=9月、沖縄市の同院

 ちゅうざん病院(沖縄市)副院長の吉田貞夫医師が、血液データから筋肉量を推定する方法を開発し、このほど特許を取得した。筋肉量を推定することで、加齢により筋肉量が落ちて身体機能が低下し日常生活に支障をきたす「サルコペニア」の判定や、その要因となる低栄養を早期に見つけ、予防につなげることを目指す。

 サルコペニアは転倒・骨折、食事や排せつなどの日常生活動作(ADL)の低下、術後合併症、誤嚥(ごえん)性肺炎などのリスクになる。

 吉田医師によると、筋肉量を測定するためには現在、高額で特殊な機器が必要で、測定に時間がかかる。また機器がない医療施設もあるため、誰でも測定が可能なわけではない。

 世界的に高齢化が進みサルコペニアが避けて通れない問題となる中で、筋肉量の測定方法は国際的にも大きな問題となっており、その対応について国際的なワーキンググループで議論が継続されている。

 吉田医師はこうした状況を鑑みて、より簡単でスピーディーな方法で筋肉量を測定しようと、約3年をかけて開発に取り組んだ。特許は腎臓の働きの指標となる「クレアチニン」が筋肉で作られることに着目し、クレアチニンの値とより正確に腎機能の低下を示す血中のタンパク質「シスタチンC」の値を独自の式に当てはめて筋肉量を推定する。

 健康診断など日常的な血液検査で分かるため今後は住民健診、職場の健康診断、離島での診療、感染症発生時などでも簡単に使えるようになる。また結果を基に栄養状態を改善する食事や運動などのアドバイスをすることにより、日常生活に支障のない期間である健康寿命の延長にもつながることが期待される。今後は健診代行企業や食品メーカー、生命保険会社、介護関連企業などと連携し、有用性を検証していく予定だ。

 吉田医師は「さまざまな場面で役立ててもらい、高齢者が元気に生きられる社会づくりに貢献していきたい」と話した。
 (嶋岡すみれ)