華麗な技「モハメド・アリのよう」 名牛・闘将ハヤテ逝く 20勝1敗、最多13度防衛 


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他を寄せ付けない強さで連勝街道を突っ走った闘将ハヤテ =2013年8月(夏の全島闘牛大会)

 【うるま】全島闘牛大会で歴代最多の防衛記録を誇る名牛、闘将ハヤテが8日、死んだ。16歳だった。ハヤテは2011年にデビューし、破竹の勢いで18連勝の記録を打ち立てた。

 19年に引退するまでの通算成績は20勝1敗。調教を担当していた幸地諒秀さん(37)は「これ以上の牛には出合えないと思えるぐらい最高の牛。たくさんの幸せと思い出をありがとう」と語った。

 「強い牛がほしい」。諒秀さんの祖父・良盛さんがほれ込み、幸地家の牛舎に迎え入れられた。期待に応えるように、5戦目で全島中量級王者となり、その後も実力牛の挑戦をはねのけ星を伸ばした。16年には戦後闘牛界で最強と名高い、岩手トガイーの全島11回防衛を32年ぶりに更新。新たな金字塔を打ち立てた。

引退後の闘将ハヤテと牛主の(右から)幸地政和さん、顕司さん、諒秀さん、政宗さん=2021年9月、うるま市

 相手の出方をうかがいながら、掛け技に割り技、腹取りを展開する。そのさまは「ボクサーのモハメド・アリの『蝶のように舞い、蜂のように刺す』があるでしょ。まさにそんな感じ」と諒秀さんは笑う。

 ハヤテは17年、それまで全島歴代最多の13回防衛で5年間君臨していた王座を明け渡した。翌年、ハヤテの勝利するのを誰よりも喜んでいた良盛さんが「20勝させたい」との言葉を残し世を去った。その願い通り、ハヤテは復帰戦で勝利。引退を決めていた次戦で、約2500人の観衆が見守る中、通算20勝目を挙げて有終の美を飾った。

 引退後は諒秀さんの弟の政宗さん(35)が引き取り、世話を続けた。7月ごろから体調を崩し、今月8日朝に静かに旅立った。ハヤテの死は良盛さんの仏壇にも報告されたという。諒秀さんは笑いながら「オジー、ハヤテが行くから、そっちで面倒見てあげてって伝えたよ」と少し寂しそうな表情で話した。(新垣若菜)