砂利道歩く草履の音、住民たちの会話もはっきり 41年前の伊計島の祭祀「ウマチー」音源を寄贈  音源は1500本、各地の祭祀を記録する男性の思いとは 沖縄


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伊計自治会の玉城正則会長(右)に音源を手渡す宮里千里さん=6日、うるま市の伊計公民館

 【伊計島=うるま】沖縄県うるま市伊計島で41年前に録音された貴重な祭祀(さいし)の音源がこのほど、那覇市在住の宮里千里さん(72)から伊計自治会に寄贈された。宮里さんは1970年ごろからライフワークとして琉球弧の祭祀を録音してきた。今回寄贈した音源は81年の旧暦2月15日に録音された伊計島の2月ウマチー(麦の初穂祭)。「各地の祭祀が静かに消えていきそうな気配を感じ、急いで取材する順番を決めた」と当時を振り返った。

 那覇市職員だった宮里さん。「伊計島に素晴らしい神謡(かみうた)が残されている」と聞き、宮城島と伊計島を結ぶ橋梁(きょうりょう)工事中にフェリーに乗って島を渡った。「公共工事中の祭祀、祈りは実に素晴らしく、現実的な音はまさに生活の音だった」と語る。

寄贈された1981年のウマチーの音源

 音源には神人を中心に十数人の参加者がノロ殿内で歌う様子や、砂利道を歩く草履の音、住人同士が方言で会話する様子などがはっきり残る。「たくさんの祭祀を録音してきたが、伊計島の神謡の力強さとしっかりした声は、強く印象に残っている」と話した。

 宮里さんの手元には1500本を超える祭祀の音源がある。「過去の記憶が消えかかっていく中で、地域に恩返しをしたい」と各地の自治体に音源を返していく活動を始めた。資料を受け取った玉城正則自治会長は「文化的価値がある非常に貴重な資料。自分たちの地域に素晴らしい文化や風習があることを誇りにしてほしい」と喜んだ。

(石川優子通信員)