人気のみそ汁、母から受け継いだおもてなし 食堂味乃屋(金武町)〈うちなー味まーい〉65


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具だくさんで熱々の「みそ汁」

 米軍キャンプ・ハンセン第1ゲート前に広がる繁華街、通称・新開地の端にひっそりとたたずむ食堂味乃屋は、手ごろな価格で食事を楽しめる店だ。人気のみそ汁(600円)は新鮮な葉野菜ベガナが載った深皿の底に豚肉と野菜がごろごろと転がり、みその熱いスープとネギの香りが食欲をそそる。

 オーナーの兼本朝美さん(70)によると、創業者である母・先田秋子さんが食堂を始めたのが復帰の年、1972年頃のことだという。兼本さんが継いだのは、母の突然の交通事故がきっかけだった。一時危篤状態になったことから、兼本さんは町内で経営していたスナックを閉じ、食堂に入ることを決めた。「本当に大変だったけど、見よう見まねで作った。残り物を食べて、薄いねと思っては直したり。そこからいつの間にか22年経ちました」

 常連客が絶えない理由は、兼本さんの明るい人柄にもありそうだ。「私もゆんたくーだからね。時間があればお客さんの子どもを抱っこしてあげる。心と心の触れ合いよ」。那覇や本土からのリピーターも多く、観光客にはフーチャンプルー(600円)が人気だ。

 母は事故後、医師も驚くほどの回復ぶりをみせ、90歳まで生きた。7年ほど前に子や孫に見守られ、大往生を遂げたという。その母も「(この店は)あちさん(暑い)」と言われると「サウナだったら千円するけど、ここは無料だよ」と切り返しつつ回転率を上げるような、客との会話を楽しむ名店主だったという。

 おもてなしの極意が母から娘へ受け継がれているのかもしれない。

 午前11時~午後9時。定休日は日曜と第2・第3木曜。金武町金武4135―1。電話090(1944)9056。近くには町営駐車場やアクティブパーク駐車場がある。

(増田健太)

食堂味乃屋とオーナーの兼本朝美さん=11日、金武町金武