沖縄「平和の礎」はいかにして創られたか 本出版でトークイベント、礎の活用や継承呼び掛け


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「平和の礎」建立に関わった(右から)新垣義三さん、松本淳さん、比嘉博さん、高山朝光さん、石原昌家さん、佐々木末男さん、本を出版した高文研の山本邦彦さん=22日、那覇市のジュンク堂書店那覇店

 沖縄戦の全戦没者を国籍や軍人、民間人の区別なく刻銘した「平和の礎」の建立の経過や理念を紹介する「沖縄『平和の礎』はいかにして創られたか」(高文研)の発刊を記念したトークイベントが22日、那覇市のジュンク堂書店那覇店で開かれた。同書を執筆した建立当時の県の担当者や研究者が登壇した。全ての沖縄戦戦没者を刻んだ礎の建立に至るまでの苦労や込めた思いを語り、活用や継承を呼び掛けた。

 元県知事公室長の高山朝光さんは、建立費用の課題や県議会の反対もあった中で「鉄血勤皇隊として沖縄戦を体験した大田昌秀知事の執念がなければできなかった」と振り返った。その上で「敵味方なく刻んだ礎は世界に例がない。沖縄の人々の平和を愛する心だ」と語り、継承を訴えた。

 県の主査だった比嘉博さんは、朝鮮半島出身者の追加刻銘が進まない課題に触れ、今後の県の取り組みを呼び掛けた。

 沖縄国際大学名誉教授の石原昌家さんは、現在の米中対立と南西諸島の防衛強化への危機感を示し、「第2の『平和の礎』を造らせない共通認識から本の発刊に至った」と説明。「命の大切さを具現化した」礎を通じ、武力によらない平和実現への思いを語った。このほか、平和の礎での音楽祭や芸術祭、沖縄平和賞の授賞式会場として活用を求める意見も出された。 (中村万里子)