【深掘り】那覇軍港移設、沖縄県の受け入れで転換点に 玉城知事と県議会与党に隙間風も


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軍港移設協議会後、報道各社の取材に答える嘉数登知事公室長(右)ら=25日、県庁

 約7カ月ぶりに開かれた那覇港湾施設(那覇軍港)の移設協議会で、県は防衛省が3月に示した形状案を受け入れ、軍港移設の動きは大きな転換点を迎えた。玉城デニー知事を支援する「オール沖縄」勢力や支持層には移設に反対する意見も根強く、玉城県政の「急所」とも言われてきた軍港問題。県関係者は「行政としてやるべきことは、やらなければならない」と述べ、行政手続き上、協議を進めていく姿勢を示す。

 「与党はもう必要ないのではないか」。県の受け入れを報道で知った与党県議はこう自嘲した。玉城知事は従来、軍港移設を推進する姿勢を示してきたため、与党会派は表だった県執行部批判は避ける「黙認」姿勢だが、直前まで与党に相談がなかったことに、微妙な隙間風も吹いている。

歓迎

 一方、県の形状案受け入れを待っていた那覇市や浦添市は、県の受け入れを歓迎する。那覇市では、協議の進展によって政府と市で組織する「県都那覇市の振興に関する協議会(振興協)」の再開に期待が高まっている。振興協は、那覇市がこれまで、那覇軍港を受け入れてきたことに対する振興事業の協議会だが、2013年を最後に休眠状態となっている。

 那覇市幹部は「政府は軍港移設が進展しないと、振興に取り組みにくい側面もあったのではないか」と話す。23日の市長選で当選した知念覚氏は25日、取材に対して振興協の再開に向けて政府へ働き掛ける意向を示す。他の首長らと協力しつつ「西海岸の開発構想について、連携を密にしてやっていきたい」と話した。

変化

 政府側は、県の形状案受け入れが、知事選や那覇市長選以降になると見通していた。政府関係者は「むしろ、港湾計画の改定を進めている地元の那覇港管理組合が焦っていたのではないか。県にプレッシャーがあったはずだ」と語る。

 物流量が増加し那覇港の機能がひっ迫する中、開発や利用などの指針となる那覇港港湾計画は03年以降、約20年改定されていない。移設協議会の容認を受け、年度末に向け、計画策定作業が進められる見通しだ。

 一方、軍港の移設は、今後、環境影響評価や埋め立て承認手続きなどが進められるため、代替施設完成までの見通しは「おおむね17年後」と試算される。国際情勢が変化する中、新施設の必要性が今後揺らぐ可能性もある。県幹部は「現行機能の確保、維持にとどめるために意見を言っていく」と語り、状況を踏まえながら政府に「注文」を付け続ける構えだ。
 (池田哲平、明真南斗、伊佐尚記)