沖縄観光、量も質も必要 かりゆしグループ60周年 オーナー会長 平良朝敬氏<焦点インタビュー>


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平良朝敬氏

 10月で創業60周年を迎えたかりゆし(恩納村)は、ホテル運営を通じて県内観光業の成長をリードしてきた。同グループオーナー会長の平良朝敬氏に、今後の展望などを聞いた。

 ―「かりゆし」を継ぐきっかけは。

 「8歳の時に両親が観光ホテル沖ノ島を開業して、いろんな人に会えるのがホテル業の魅力だと幼い時から思っていた。沖縄に連れてきた大学の友達が海を見て感動していたことから、海洋リゾートを思いついた。観光という言葉が浸透していなかった時代だが、沖縄を発展させようという思いで大学を中退し跡を継ぐことに決めた」

 ―60年を振り返って。

 「年間観光客数が2万人の時から、1千万人の時まで味わった。日本復帰直後は県外の旅館と比較され、料理やスタッフの言葉遣いなどで苦情を受けた。当時は琉球料理はまずいという認識だった。東京から研修要員を呼び、10年ほどかけてサービスを向上させた。サミットや(ゴルフの)ジャンボ軍団など著名人との関わりも多かったのは誇らしく思っている。苦しいことも多かったが、お客さんの『ありがとう、楽しかった』の言葉で全てが吹き飛んだ」

 ―沖縄観光の課題は。

 「量から質への転換ではなく、量も質も追わなければ観光地としての魅力が衰退してしまう。質だけを求め観光客が減ってしまうとホテルの稼働がなくなり、低価格のホテルが淘汰されてしまう」

 ―観光業界の人材確保策は。

 「週末と平日、夏場と冬場で偏りがあるため平準化を求める声も多いが、ホテルの定休日を設け週末に人員を厚くして、平日は薄くするなど働き方改革が必要だ。家庭との両立のためにあえて契約社員を希望する人も多いので、うまく雇用を確保していきたい。円安で外国人労働者を呼び込みにくい状況だが、それぞれの国への理解、精神面のケアなどきちんとコミュニケーションを取ることで、沖縄のホテルで働く魅力を感じてもらえると思う」

 ―今後のかりゆしグループの展望は。

 「オーバーツーリズムと言われた2019年の7割の稼働率で利益が出るような仕組みを考えなくてはならない。25年にはインバウンド(訪日客)が戻るとみている。海外を常に視野に入れて100周年までのビジョンを描いている。コロナ禍の2年半で過去50年分の利益を失ってしまったが、70周年までに取り戻したい。今後は離島などに拠点を置いて、空飛ぶ車などの空中輸送も考えると、夢が広がる」

 (聞き手・與那覇智早)