「困っている人たちへ」捨てられた圧力鍋から1600万円、発見者の思いとは


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
昨年5月に1600万円が見つかった恩納村一般廃棄物最終処分場=27日、恩納村冨着

 帯付きの1万円の札束が圧力鍋にぎっしり入っていた。その数、16束。恩納村の一般廃棄物最終処分場で昨年5月、現金1600万円が見つかった事案で、発見した男性3人が琉球新報の取材に応じた。大金を発見後、すぐに処分場の管理者に報告したという3人は、訴訟を経て受け取りが認められた現金のうち300万円を同村の社会福祉協議会に寄付する。「新型コロナで困っている人たちに支援が届いてほしい」と話した。

 うるま市の鉄筋工宮城英和さん(44)は昨年5月16日、友人2人と一緒に処分場を訪れた。3人とも釣りやバイクが趣味。処分場は当時、捨てられた鉄片や廃材を、住民らが持ち帰ることができた。宮城さんは10年ほど前から、釣り道具などが壊れたら処分場で部品を探し、修理するなどしていた。

 この日は密閉できる容器を探していた。圧力鍋を見つけ、手を伸ばすと、中に札束が入っていた。「子ども用のおもちゃかな」と思い、1万円札を空にかざした。透かしが入っていた。「本物だ」。鳥肌が立った。一緒に来ていた会社員の石川卓宏さん(50)=恩納村=、会社員の知花勝さん(38)=うるま市=に声を掛け、3人で処分場の管理者に現金を引き渡した。

 村側は現金を県警石川署に提出。石川署は遺失物として公告したが、持ち主は現れなかった。村は宮城さんらが処分場に違法に立ち入っており、現金の所有権は村にあるなどと主張。宮城さんらは対応に納得できず、訴訟で争った。

 「知り合いに言っても信じてもらえないような体験」をした3人。日頃から、コロナ禍で困っている人たちへ支援がしたいと話していたという。石川さんは「自分たちはどうにか食べていけている。本当に困っている人たちの救いになることがしたいと考えていた」と明かす。

 和解で得た600万円のうち、訴訟費用や税金などを差し引き、300万円を寄付する。「正直者が報われる世の中になってほしい」と願った。
 (前森智香子)