部活動をプロが指導 うるま市の改革がモデルケースに 指導者への謝金、工面するために活用したのは…


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外部指導員(中央)から指導を受ける卓球部の中学生=6月、うるま市立あげな中

 公立中学校の運動部活動などの運営を地域団体に移行する「部活動改革」で、うるま市の先進的な取り組みが注目を集めている。地元プロスポーツチームと連携した指導者の登用や、財源確保に向けた「企業版ふるさと納税」の活用だ。今後各自治体が直面するであろう課題に対し、5年前から向き合ってきた成果が一つのモデルケースになるかもしれない。

 「常に同じポイントで打とう」「さあ打ったら元の場所に戻って」。うるま市立あげな中の男女卓球部では週2日、プロ卓球チーム「琉球アスティーダ」のアカデミーでコーチを務める長田晟さんが指導に当たる。

 40人以上いる教諭の半分が残業70時間を超えていた同校は、2022年度からバドミントンやサッカーなど計6競技で外部指導員に依頼。島袋勝範校長は「顧問には未経験者もおり、どう教えたらいいか分からない心理的負担もあった。解決の一助になる」と語る。

 橋渡し役となったのが指導者の人材バンク設置など部活動の地域移行を全国で推進する「スポーツデータバンク社」だ。17年からうるま市と連携し、市内2校で始まった事業は現在、離島を除いた9校で導入。バスケットボール部にはBリーグ1部の琉球でプレーした元選手も派遣。スポーツ庁の有識者会議で委員を務めた石塚大輔社長は「質の高い適切な指導が受けられるのは子どもにとって大きい」と話す。

部活動について話し合う、うるま市の嘉手苅弘美教育長(左)と「スポーツデータバンク社」の石塚大輔社長=6月、うるま市

 実施校が増えるにあたって重くのしかかったのが指導者への謝金だ。「指導の質」を重視するうるま市では一般的な外部指導員の2倍近い時給3千円を支給。スポーツ庁によると、民間団体へ移行した場合に指導や保険の費用が従来より生徒1人当たり年間約1万7千円高くなるとの試算がある。困窮世帯の生徒が参加できない事態を避けるための方策は急務となっている。

 運営資金の確保のために同社が目を付けたのが「企業版ふるさと納税」だ。自治体の地域活性化事業に寄付した企業の法人税などの税負担を最大9割軽減する。個人版と違って返礼品がなく、寄付額の少なくとも1割は企業の支出になるが、社会貢献をPRできるのがメリット。導入した21年度は約1500万円が集まった。

 学校体育施設を円滑に民間団体へ貸し出すためのシステムの試行も始まり、スポーツ庁の室伏広治長官は今年2月にうるま市の取り組みを視察。既に休日移行の土台は整っており、同市の嘉手苅弘美教育長は「スムーズに取り組める」と自信を見せる。25年度までに100以上の自治体への支援を目指す石塚社長は「各地域で状況が異なるが、うるまモデルが取り組みの後押しになることを期待したい」と青写真を描いている。


<用語>部活動の地域移行

 公立中学校の教員が担ってきた部活動を、地域団体や民間事業者など学校外に委託する改革。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の中学教員は仕事時間が特に長く、部活などの「教育課程外活動」の占める割合が大きい。中教審は2019年、教員の働き方改革を進めるために部活の在り方を見直すべきだと答申した。
(共同通信)