旧人に関する研究が評価され、ノーベル医学生理学賞受賞が決まった沖縄科学技術大学院大学(OIST)のスバンテ・ペーボ客員教授が10月4日、恩納村での大学院大の会見にオンラインで参加した。ゲノムなどを通して、現生人類との比較を進めてきたペーボ氏は「現代人類の特別さや(絶滅した)ネアンデルタール人、デニソワ人との違いを突き止めたい」と意欲を語った。
ペーボ氏はOISTの会見にドイツの自宅からオンラインで参加。約1時間にわたって記者の質問に答えた。
現在は「(人類が)日本でどのようなコロニーをつくったか研究している」と説明。「ずっと同じ所にいる純粋な人のまとまりはなく、現代の人類は常に動き回り、お互い混ざり合ってきたと示せると思う」と見通した。
2020年の客員教授就任以降、コロナの影響などで少なかったOISTでの研究についても「定期的ではないが、高い頻度で訪問したい」と意欲を示した。来年1月にOISTを訪問する予定があるという。基礎研究全体の進展については「研究者を見いだして資金で支援することが重要」との見解を述べた。
会見に同席したOISTのピーター・グルース学長は「素晴らしい受賞」と賛辞を贈り、「科学的なパフォーマンスは沖縄振興の根拠になる」と強調した。
ペーボ氏の研究に関わっている若手研究者も会見に同席した。OIST訪問時にやりとりをしている。ペーボ氏について「上司というよりも研究のメンター(助言者)として重要だ」と語った。
(塚崎昇平)
旧人遺伝子 コロナに関係
ノーベル医学生理学賞に決まったスバンテ・ペーボ氏は、絶滅したネアンデルタール人の遺伝子が、現代人に受け継がれていることを明らかにした。この遺伝子は新型コロナウイルス重症化リスクとも関係していることも明らかになった。
ペーボ氏らは新型コロナ感染拡大が始まった2020年以降、一部遺伝子が重症化リスクを高めることを明らかにした。また、別のネアンデルタール人由来の遺伝子は重症化リスクを下げることも明らかにした。
10月4日の会見でペーボ氏は「人によってネアンデルタール人のどの部分を受け継いでいるかは違う」と説明。コロナ重症化リスクを高める遺伝子も地域ごとに持つ人の割合が異なることを説明し「各地で違いを理解することで、今後の感染症でも使える情報になる」と述べた。