【深堀り】日米共同演習で拡大する民間港湾・空港の使用 沖縄県の対応に「揺らぎ」も


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民間の高速輸送船で車両などを輸送する陸上自衛隊=2021年9月15日、うるま市の中城湾港新港地区

 沖縄など全国各地で実施される日米共同統合演習「キーン・ソード23」が11月中旬に迫り、防衛省・自衛隊は1日から、部隊や装備品を県内に事前輸送し始めており、準備を本格化させている。同演習は武力攻撃事態を想定し、米軍と自衛隊が「即応性や連携能力を高める」ことを目的に、県内各地で混ざり合って共同訓練を繰り広げる。

 県はこれまで、米軍に対しては民間港湾、空港の使用について「緊急時以外は自粛を求める」との立場を一貫して示してきた。一方、防衛省資料によると、10~19日の演習期間中、米海兵隊40人が陸自のCH47大型輸送ヘリコプターで与那国空港に移動する計画がある。「共同演習」の名の下に、自衛隊機が米軍を輸送する形だが、県は陸自ヘリに対して空港使用の「自粛」までは求めない見通しだ。

■揺らぎ

 県担当者によると、米軍の船舶や航空機に民間港湾、空港の使用自粛を求めるのは、日米地位協定などで国内法が適用されず、住民生活への影響が出る可能性があるからだという。その上で、与那国に自衛隊ヘリで米兵を運ぶことに関し「自衛隊の航空機を使用した場合は『使用すべきではない』とまでは、言えないのではないか」との考えを示す。航空機の所属によって対応を分ける判断だが、こうした県の見解の「揺らぎ」を厳しく追及する声もある。

 10月31日、県の担当者と面談した沖縄平和市民連絡会の1人は「自衛隊と米軍を別個のものとして考えることはできない状況ではないか。海兵隊40人は自衛隊機で来ることがはっきりしており、民間空港の使用だ。県は毅然(きぜん)と対応する必要がある」と強く迫った。県側は「庁内で調整する」と受け取ったが、県内での演習は、かつてないほど広範囲で、その一つ一つに難しい対応も迫られている。

■環境整備加速

 沖縄防衛局が県に示した資料によると、民間船舶を借り上げるPFI船舶で、鹿児島港から中城湾港に部隊輸送を実施する計画もある。沖縄へ向かう「往路」の期間は1~9日までとし、陸自西部方面隊、空自航空総隊員など約200人が移動してくる。

 一方、県によると、1日午後5時の時点で、自衛隊や防衛省などから港湾使用許可申請は出されていない。中部土木事務所中城湾港分室は週に一度、停泊岸壁を使用者が調整するため「バース会議」を開き、1週間分の計画を立てているが、1日の時点で連絡などはないという。

 ただ、船舶自動識別装置(AIS)によって、自衛隊が通常借り上げる民間輸送船2隻の位置を分析したところ、1日時点で、そのうち1隻が北海道から沖永良部島へ向かっている。関係者によると、中城湾港への部隊輸送は8~9日ごろになる見込み。民間港の使用拡大に向けた環境整備は一気に加速していく見通しだ。

(池田哲平)