1943年サントス事件 ブラジル政府に謝罪訴え 日系人退去の歴史知って


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
サントス事件について語る(左から)松林要樹監督、島袋栄喜さん、上原サダオミルトンさん=5日、西原町翁長の沖縄キリスト教学院大学

 沖縄キリスト教学院大は5日、映画「オキナワサントス」の上映会とトークショーを西原町の同大で開いた。上映後のトークショーに監督の松林要樹さん、ブラジル県系人でサントス事件を経験した島袋栄喜さんと上原サダオミルトンさんが登壇した。

 映画で取り上げられた「サントス事件」は、1943年7月にサントス港沖でドイツの潜水艦がブラジルや米国の貨物船を撃沈したことを受け、ブラジル政府が日本など敵対する枢軸国の国民をサントス市から24時間以内に強制的に退去させた出来事。

 日系人の多くに沖縄移民が含まれていた。土地や財産は没収され、破壊された家もあった。事件はこれまであまり語られておらず、ブラジル国内でも知る人は少ないという。上原さんは当時について「財産や土地を取られ、妊婦も含めて着ている服だけで生きていかなければならなかった」と振り返った。

 戦後、強制収容についてブラジル政府から謝罪や補償はない。島袋さんは過去に、ブラジル政府に日系社会への謝罪を求める文書を持って行ったが拒否された事がある。現在は署名活動を実施している。

 島袋さんは米国やカナダでも同じことが起き、政府が正式に補償を伴った謝罪をしていることを挙げ「事件の犠牲になった人が減り、今から補償を求めても意味がないかもしれない。ただ、犠牲者の魂のためにも、ブラジル政府から謝罪の文書だけでも求めたい」と話した。

 松林さんは、取材の中で当事者のウチナーンチュが事件について家族に話をしていないケースがよくあったことを振り返った。「あと10~20年たつと(当事者が)どんどん減ってしまう。急いで撮った。映画が広まれば謝罪に向けた追い風になると考えている」と話した。 (中村優希)