復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉11月11日「大平外相、地位協定の改定交渉も/基地立ち入りで答弁」―琉球新報アーカイブから―


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 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年11月11日の琉球新報1面トップは、「石川のアルミ誘致断念へ/県公害対策連絡協小委員会/汚染の影響を予想/『立地上好ましくない』」との見出しで、沖縄県の公害対策連絡協議会(座長・喜久川県企画部長)でのアルミ企業の沖縄誘致の審議内容を紹介している。協議会としては「石川地区への誘致は公害対策上好ましく」と結論付けたことを伝えている。

 記事では「県当局は事実上、アルミ企業誘致を断念しなければならない状況に追い込まれている。また公害対策連絡協は石川地域以外への立地についても住民地域と十分な距離を取ることなどきびしい条件をつけており、現状では実現の見込みは薄い。アルミ企業誘致を撤回するとなると同企業を工業開発の柱としている沖縄振興開発計画にも大きな改編を迫られることになり、県当局は窮地に立たされている」と記している。

 さらに関連の解説記事では「開発より公害防止と環境保全が優先」との見出しを掲げている。記事では、沖縄振興開発計画の中での位置づけについて「計画目標年次の10年後を展望するフレームのなかではアルミ企業誘致も組み込まれていた。このためアルミ企業誘致を断念するとなると、いま県で策定中の開発計画各論部分に大きな改編を要することになる」と指摘。その上で「たとえば県民所得の本土との格差是正である。(中略)県民総生産の8分の1近くをアルミ企業誘致にかけているわけで、誘致できなければ所得格差の是正もおぼつかなくなる」と解説している。

 米軍基地の立ち入りに向けて地位協定改定の要求に対する大平正芳外相の国会答弁について「地位協定の改定交渉も/外相/基地立ち入りで答弁」との見出しで報じている。記事では公明党の三木忠雄氏が「米軍基地への定期的な立ち入りができるよう地位協定を改定せよ」と求めたのに対し大平外相は「必要なら(米側と)交渉するのにやぶさかではない」と答えた様子を紹介している。さらに三木氏が、安保条約と基地の問題についてただしたところ、大平外相は「在日米軍基地の縮小について米側と話を詰めている。特に関東地区のような都市化の進んでいるところは、年内にも一部を片づけられると思う」と答弁し、東京周辺の基地縮小が近く実現することを示唆している。

 参院予算委員会でのやりとりでは田中角栄首相が答弁した様子を「安保と調和図り、基地縮小/VOAは5年後に撤去/事前協議制度の改善考えず/田中首相答弁」との見出しで伝えている。記事では「田中首相をはじめ政府側は①沖縄振興開発を進めるうえで基地の整理縮小は重要な課題だが安保条約の目的との調和を図りつつ解決されるべきものだ②沖縄の航空管制を米軍にゆだねているのは、わが国の要員確保や施設など準備体制がとれていないためだが、2年後といわず早急に引き継ぐよう努力したい③事前協議制度の洗い直しのための日米協議委員会は通常国会(12月9日に招集)までに開くが、事前協議制度そのものを改善する考えはない④VOA放送は協定どおりの措置(5年後撤去)を実行する―などの点を明らかにした」と記している。

 知花弾薬庫で発生した催涙ガス漏れ事故やB52飛来問題を受けて、屋良朝苗知事が米陸軍司令部でメイプルズ司令官らと会談したことを伝える記事では「〝基地点検は権限外〟/屋良知事、メイプルズ司令官らと会見/催涙以外に毒性ガスはない」との見出しで、沖縄側の要求に対する米側回答を伝えている。回答については「基地の総点検などの申し入れに対し①ガス事故に会った②人の従業員は診察の結果、進退には全く異常がない②同場所にはこれ以上CS(催涙ガス)はなく、安全措置がなされている」と紹介している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。