復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉11月15日「復帰半年、変わらぬ基地・疑惑そのまま/やはり、冷たい本土」―琉球新報アーカイブから―


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 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年11月15日の琉球新報1面トップは、「復帰半年/変わらぬ基地、疑惑そのまま/厳しい〝自治〟の前途/自衛隊もなし崩し移駐」との見出しで、5月15日の日本「復帰」から半年が経過した現状を点検している。記事では「国会論議の中で、さまざまな問題が提起され、国論を二分した形で実現した復帰だけに、当初から険しい道のりが予想されたが、この半年間の実態は予想を上回る厳しいものであった」と指摘。さらには「通貨交換に伴う異常な物価高騰の中で幕開けした新生沖縄は、引き続く軍従業員の大量解雇、自衛隊の本格配備、本土資本による土地買い占め、変わらぬ基地被害など連続パンチに見舞われ、政治的にも経済的にも不安と動揺をかき立てた。この『復帰不安』は、半年後の現在、一向に解消されておらず、逆に中央集権を指向した政府の施策によって、県民自治が侵食されるなど混迷の度を増している、といえよう」と現状分析をしている。

 関連記事では「やはり、冷たい本土/総合事務局も影薄れる」との見出しで、沖縄に向けられた中央政府の姿勢を紹介している。記事では、「復帰」して半年を迎えた現在「政府の沖縄に対する姿勢が大きく変化していることが注目される。それは復帰に当たっての基本姿勢の変化であり〝空洞化〟である。昨年暮れの沖縄国会で政府が強調し続けていた復帰施策を貫いていた精神が、わずか半年間でくずれ始めていることだ」と厳しく指摘している。

 2番手の左肩には「きょうベンジャミン初公判/那覇地裁/軍従業員射殺事件/被告の意見陳述も」との見出しで、米軍キャンプ・ハンセン内で日本人従業員が海兵隊上等兵に射殺された殺人事件の初公判が那覇地裁で開かれるとの記事を被告の顔写真とともに掲載している。

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 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。