米国依存に変調の兆し 岸田政権への評価 菅原文子さんコラム<美と宝の島を愛し>


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 岸田政権の支持率が下がっている。日本は戦後最大の難局下にあり、誰が総理になっても、うなぎ上りの支持率はないだろう。私は岸田政治について、大方の世論やマスコミの論調とは違う見方をしている。生意気言うなと紙つぶてが飛んできそうだが、横並びで歩かせたがる日本的風土に抵抗して書いてみよう。

 まず岸田政権の評判を落とし、トップの座から引き下ろしたいのは野党ではなく、権力の執念だけで政治をしてきた安倍晋三元総理の残党たちに見える。旧統一教会との三代にわたる長く深い付き合いが露見し、危うく見える安倍氏の派閥の議員たちだが、いまだに力を保持しているのが不可解で不快だ。この奇怪な現実は、メディアが厳しい調査報道をしなくなっていることも原因の一つだ。

 安倍政権時に、NHKはじめ大手メディアに威圧的だったことは記憶から消えていない。世論形成にはメディア報道が大きな影響を与える。メディア界はいまだに安倍元総理の呪縛から解放されていないのではないか。最新の「報道の自由度世界ランキング」では、台湾、韓国よりはるかに下の71番目の低さだ。

 今月初めに行われた国連総会の委員会で、日本が提出した核兵器廃絶決議案が、米英仏など核兵器保有国を含む賛成多数で採択された。広島出身の首相として「核兵器のない世界」への着実な成果となった。石油の確保も「サハリン1」への参加を表明した。豪州を訪問し、軍事的安全保障を取り決め、エネルギー、食糧の確保も話を付けたもようだ。やってるじゃないですか、岸田首相も! 表面的な政治メッセージは無難に型通り出しても、実質的には外交と経済的利益は損ねていない。安倍政権時代は各国首脳に金をばらまく愛想の良い社交術外交で、今になればその多くは無駄金だった。岸田文雄首相は海外訪問も無駄遣いせず単身で出向いているのも好感が持てる。

 「新しい資本主義」も意味不明とばかにする向きがある。これから徐々に手の内は明かされるだろう。福島原発事故、伝染病の世界的まん延、ウクライナ戦争による資源枯渇、アベノミクスの負の遺産である円安、多難な問題に解を見つけ、克服するのは一朝一夕にはできない。

 私の理解では、敗戦後の資本主義が米国型で日本人の勤勉さで成功を収めたが、米国でもその資本主義は一次、二次産業重視から金融資本主義と三次産業型へと方向転換をした。二次で残したのは軍事兵器製造が大きい。岸田政治はこの米国型資本主義、米国依存の軍事的安全保障から、豪州、ヨーロッパへと広角度を目指しているように見える。それが新しい資本主義ではないのか。

 ジャパンハンドラーに脅され続けた日本は、米国におんぶに抱っこの10歳の子どもから成人へと成長しつつある。大人になるのは苦しいが、誇りと希望はその苦しみから生まれる。堪えようじゃありませんか、敗戦後の日本がそうであったように皆で力を合わせて。いつの時代も、危機は新しい時代を切り開くチャンスだ。 

(本紙客員コラムニスト、辺野古基金共同代表)