瀬長島や真玉橋、戦前の姿は? 高齢者の聞き取りを基にデジタルで復元 豊見城市教委 3Dで一般公開も


社会
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3DCGで復元途中の真玉橋集落(豊見城市教委文化課提供)

 【豊見城】豊見城市教育委員会文化課は高齢者への聞き取りを基にして、沖縄戦前の集落をデジタル化で立体的に復元する事業に取り組んでいる。県内初の試みとみられ、市真玉橋と瀬長島の風景を復元する。最終的に3Dのデジタルマップを作成して来年3月下旬に一般公開する予定。当時の屋敷の配置や数、垣根の高さや色などの集落景観を詳細に知ることができるようになる。

 「ここは竹だった」「ここはシークヮーサーが生えていたよ」。真玉橋で生まれ育った金城昌勝さん(88)は4日、文化課を訪れ、学芸員の奥原三樹(みつき)さん(30)の聞き取りに、当時の記憶をたどりながら答えた。文化課所蔵の「屋号地図」で作成した図面を基に、金城さんは屋敷一つ一つを指さしながら「ここは石垣で囲われていた」「ここは井戸」などと記憶をたぐり寄せながら話した。

戦前の真玉橋集落について語る金城昌勝さん(右)=4日、豊見城市教育委員会文化課

 デジタル復元は3次元コンピューターグラフィックス技術を活用する。米軍の地形図を基にコンピューターで立体地図を作製し、そこに米軍が沖縄戦前に撮影した空中写真を貼り合わせる。最後に金城さんらから聞き取りした、屋敷や石垣の高さなどの立体的な情報を盛り込み360度から見られるCGにする。完成後は市歴史民俗資料展示室の大型タッチパネルで無料で閲覧できるようにする。

 事業は4月に開始。聞き取りは5月からで、コロナ禍での中断を経て9月下旬に再開した。これまでに10回以上金城さんから聞き取りを続けている奥原さんは「屋敷の様子は写真や文献だけでは読み取れない。復元する上で証言は一番重要になる」と指摘。文化課主査の島袋幸司さん(38)も「空間についての聞き取りはなかなかできていなかった。戦前を知る人が高齢化し今しかできない作業だ」と取り組みの意義を述べた。

 金城さんは「歴史を知らずして将来は決められない。この事業が自分たちの住んでいる場所の歴史を知り、将来のあり方を考えるきっかけになればいい」と力説した。
 (照屋大哲)