「学び直しのチャンスがある社会に」私立夜間中学開設不認可、スコーレで学ぶ生徒が願うこと


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 珊瑚舎スコーレ高等部を運営する雙星舎(そうせいしゃ)が私立の夜間中学開設に向けた設置認可を県に申請し、認められなかったことについて、夜間中学に通う生徒からは「自分の力じゃどうしようもない環境に暮らす人はたくさんいるはず。誰にでも学び直しのチャンスがある社会になってほしい」との声が上がっている。

仕事後に珊瑚舎スコーレ夜間中学に通っている飛田清美さん=9月、南城市の珊瑚舎スコーレ

 飛田清美さん(60)は2019年から珊瑚舎スコーレ夜間中学に通学している。

 「知らない男が出入りするこんな家にいたくない」。16歳、高校1年の時、家を飛び出してそのまま東京へ向かった。母親は飛田さんを18歳で若年出産し、2人暮らしだった。男性を頻繁に家に招く母を好きになれなかった。「家にいるのが一番落ち着かない」。東京で暮らす友人を頼って家出した。母親には何も告げずに出たが、警察に捜索願いを出されることもなかった。高校は必然的に中退。以来学校に通わず2019年までの40年以上を東京で過ごした。

 東京の友人は姉と暮らしていた。姉はホステスをしていて帰宅が遅い。飛田さんは住まわせてもらう代わりに家事全般を担った。母親というストレスから解放されたが、学校に行きたい気持ちは押し殺すしかなかった。

 約10年後、飛田さんは当時交際中だった、後に夫となる男性と暮らし始めた。28歳で結婚、2人の子を出産した。学校で学べなかった後悔がより強くなったのは、母親になってからだ。文字の読み書きが困難で、娘たちが学校から預かってきた便りを読んだり、提出物に必要事項を記入したりすることができなかった。子どもには「お母さんみたいにならないで」と言って聞かせた。

 娘たちの大学進学や成人、就職を見届けた後、沖縄に帰りたい気持ちと学び直しへの思いが大きくなり、家族に相談して3年前に単身で帰郷。実妹から紹介された珊瑚舎スコーレ夜間中学に入学した。

 毎日、仕事の後に学校へ通っている。「体力的にはきつくても、勉強がとっても楽しくてたまらない。学んだことが、仕事ですぐ生かせるの」。今月4日には、娘の結婚式で三線の腕を披露した。珊瑚舎スコーレで習い、練習を重ねた。「学校に通えてよかったね」という娘の言葉に涙が出た。

 飛田さんは子どもの頃を振り返り、「あの家は勉強できる環境じゃなかった」と悔しそうにする。「勉強は人生を変える。学歴で就ける仕事も変わるから、勉強した分はちゃんと認めてほしい」

 学校の後、空手道場に行く日もある。「いろんなことをやってみたいって、やる気が止まらないの」。弾んだ声で出掛けていった。
 (嘉数陽)