【深掘り】参院選で自民候補だった古謝氏の那覇市副市長起用、知念市長の狙いと自民党沖縄県連の思惑とは


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
知事選の最終日に佐喜真淳氏(右)の隣で気勢を上げる古謝玄太氏=9月10日、那覇市おもろまち

 県都那覇市のトップとして走り始めた知念覚那覇市長は、市政運営を進めるに当たっての右腕として、7月の参院選で政権与党の自民公認候補として善戦した古謝玄太氏(39)を副市長として提案する方針を固めた。那覇市の振興に向け「あらゆる財源を確保するため」に政府との連携に力を注ぐ知念市政にとって、元総務官僚という「即戦力」としての手腕と、参院選で深めた政権与党との関係性に期待を寄せた格好だ。県内保守政治家の次代のエースとしての期待を受ける古謝氏にとっては、次の大型選挙に向けた布石としての側面もありそうだ。

 今月16日に市長となった知念氏は、就任直後から各省庁などにあいさつ回りをし、精力的に政府とのパイプ作りに動いている。

 内閣府や防衛省を訪れた際には市の大型事業推進のため、現在は休眠状態にある「県都那覇市の振興に関する協議会」再開を求めるなど、「国を動かす」ことに意欲を示す。そのような姿勢を見せる中で、中央との人脈が期待できる古謝氏をうってつけの人材と判断したとみられる。

 ある与党市議は人事案の説明はまだ受けていないとした上で「官僚経験者として力を発揮してくれるだろう。議会対応などの力は未知数だが、若手なのでどんどん勉強させようということなのではないか」と歓迎した。

 「沖縄の自民党に今までにない人材だ。大切に育てたい」。自民県連幹部は古謝氏をこう評する。9月の知事選では、副知事就任を視野に自民、公明推薦候補の佐喜真淳氏の隣に立たせる戦略を取るなど、古謝氏への期待の高さがうかがわれた。

 一方、解散がある衆院選を除いて、次に迎える大型選挙は3年後の参院選。古謝氏には次の参院選出馬を望む声がすでにあるが「空白期間」が長いことへの懸念もあった。

 背景には知事選での反省がある。2018年の知事選で敗れた佐喜真氏が、今年の知事選までの間に政治家として表舞台に立つ場面が少なかったことが再度の敗北の要因の一つと指摘されるためだ。

 「佐喜真氏の轍(てつ)を踏ませてはならない」(自民県連関係者)との声もある中での副市長の提案。実績を積みながら露出を維持し、大票田那覇市での人脈作りにもつながる―。県連関係者は「次の選挙にもつなげられる」と語る。

 ある野党市議は「優秀だからといって、ずっと県外で仕事をしていた人をすぐ副市長に起用してよいのか」とした上で、「任期途中での辞任はないと信じたい」とけん制した。
(大嶺雅俊、伊佐尚記)