【記者解説】司法、沖縄県の訴えを門前払い 地方分権改革に逆行 辺野古抗告訴訟、上告棄却


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 名護市辺野古の新基地建設を巡る沖縄県と国の抗告訴訟で、8日の最高裁判決は県が問い掛けた国土交通相裁決の適法性を判断せず、訴えを入り口で退けた一、二審判決を是認した。判決理由では、埋め立て承認は国が自治体に処理を委託する「法定受託事務」だとし、都道府県が抗告訴訟で国の裁決の適法性を争えないと判示した。地域の自主性を高め、地方へ権限を移すという地方分権改革に逆行するような判断だと言える。

 公有水面埋立法に基づき、県は2013年12月に辺野古沖の埋め立てを承認したが、その後軟弱地盤の問題が判明するなどし、18年8月に承認を撤回した。承認撤回を取り消した国交相裁決に、県は訴訟を提起。承認撤回の正当性と、国交相裁決の違法性を主張し、司法に判断を仰いだ。だが、司法は具体的な判断を避け、県の訴えを門前払いした。

 承認撤回の取り消し裁決を巡る県と国の訴訟は終結した。結局、辺野古の新基地建設は完遂できるのか、国交相裁決は適切だったのかの疑問は晴れないままだ。司法が中身に踏み込まず、工事を強行する国の姿勢を追認するようでは、地方自治の本旨に反する。

 承認撤回に関して、辺野古周辺住民が起こした抗告訴訟は、現在も福岡高裁那覇支部で係争中になっている。新基地建設の賛否について、県民は反対の民意を示し続けている。埋め立ての可否について、司法は正面から向き合って判断すべきだ。

(前森智香子)