「間」に面白さ生む力 文化人類学者の磯野真穂氏が講演<琉球フォーラム>


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講演する磯野真穂さん=13日、那覇市西のロワジールホテル那覇(小川昌宏撮影)

 会員制の講演会組織「琉球フォーラム」(主宰・普久原均琉球新報社長)の12月例会が13日、那覇市のロワジールホテル那覇で開催された。文化人類学者の磯野真穂氏が「『間(あいだ)』の力」と題して講演した。

 磯野氏は初めに、1800年代にタスマニア島へ移民した白人によって疫病の流行や虐殺が起こり先住民アボリジニの人口が激減した歴史を紹介した。「ダーウィンの進化論をベースにした“人間の分類”が悲劇を起こした。タスマニア島の悲劇は過去のこととは言えない」と指摘した。

 人は分類によって安心するが、分類が乱れることで逆に不安や怒りを覚えると言う。「コロナ禍で科学に基づく分類が盛んになされたが分類に正しさはない。それぞれの集団がある理由を持って分類をつくり出している」と語る。

磯野真穂さんの講演に耳を傾ける参加者たち=13日、那覇市西のロワジールホテル那覇(小川昌宏撮影)

 コロナ禍の行動規制などを例に挙げ、「規制という形で新しい分類や秩序を次々につくるが、これに終わりはない。完全に安全な境界をつくろうとすればするほど生命そのものの本質を欠いてしまうような逆転現象が起こる」と説明した。その上で「あえて分類を崩して違うものを混ぜてしまうことが生命の活力になる場合がある。はっきりと分類できない『間』にあるものが面白さを生み、新しく考える力になる」と述べた。

(赤嶺玲子)