安保関連3文書を閣議決定 反撃力の保有、米軍との一体化…「安保大転換」で沖縄が最前線に 


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 政府は16日、防衛力強化に向けた新たな「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を閣議決定した。反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を明記し、長射程の米国製巡航ミサイル「トマホーク」の2026年度配備を目指す。集団的自衛権行使容認に続く安保政策の歴史的転換となり、軍拡競争への懸念は否めない。県内に駐屯する陸上自衛隊第15旅団を今後5年以内に師団化する計画など、軍事拡大する中国に対抗する形で南西諸島の一層の防衛強化も明確に打ち出した。演習や基地負担の増加とともに、沖縄が軍事対立の最前線に立たされる危険性が高まる。 

 反撃能力保有で自衛隊の役割は拡大し、米軍との一体化が加速。憲法9条に基づく専守防衛の理念をさらに形骸化させることになる。岸田文雄首相は記者会見で「反撃能力は今後不可欠となる」と強調。3文書を受けた日米協力を巡り、抑止力強化に向けて「あらゆるレベルで緊密に協議する」と説明した。

 23年度から5年間の防衛費総額は約43兆円で、19~23年度の1・5倍を超える異例の増額。27年度に防衛費と、それを補完する取り組みを合わせた予算水準を国内総生産(GDP)比2%とすると記載した。

 反撃能力は自衛目的で他国領域のミサイル基地などを破壊する能力。歴代内閣は自衛権の範囲と解釈しつつも政策判断で持たないとの立場を堅持してきた。変更の背景には北朝鮮や中国のミサイル技術の高度化がある。

 日本への武力攻撃が発生した際、武力行使の3要件に基づき、必要最小限度の措置として行使。先制攻撃は許されないと明示した。発動の際は米国と連携する。政府は、集団的自衛権行使が可能となる存立危機事態でも行使できるとの認識だ。