緩和見直し加速か、金利抑え込み限界 日銀事実上利上げ 物価対策評価、警戒感も 県経済界は投資冷え込み懸念


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 日銀が20日、長期金利の上限を従来の0・25%程度から0・5%程度まで上昇することを容認した。大規模な金融緩和を修正した事実上の利上げと言える。県内の経済界からは物価高騰対策としての有効性を指摘しながらも、新型コロナウイルス禍からの経済回復への影響を懸念する声などが上がった。

 日銀の決定を受け、20日の為替市場では一時1ドル=132円台と4円以上円高が進み、約4カ月ぶりの円高水準となった。一方で企業の借り入れや住宅ローンの利払い負担増加につながることから、景気の減速への懸念で株価は値下がりした。

 県商工会連合会の米須義明会長は「最近は賃金の上昇に伴わないインフレが起こっていて、中小企業にとっても厳しい状況だが、物価高騰は抑えてほしいというのも切実な願いだ」と述べ、日銀の方針変更による県内経済への影響をどう評価すべきか苦慮している。実質無担保・無利子の「ゼロゼロ融資」の返済が来年に本格化することも踏まえ「この政策がどういう風に転ぶかは様子を見るしかない」と語った。

 金融系シンクタンク・りゅうぎん総合研究所の武田智夫常務は「長期金利の変動幅の拡大は金利上昇につながる。物価対策をにらみながらの今回の金融政策決定は評価されるだろうが、政府がウィズコロナの方針を打ち出す中で経済回復に水を差さないかが懸念される」と指摘した。緩和策の修正に伴う円高については「人手不足の現状にあって、円安が是正されれば外国人留学生の就労にとってメリットが大きい」と分析した。

 県不動産鑑定士協会の高平光一会長は「大規模金融緩和で貸出金利が抑えられたことが、住宅など不動産投資の需要拡大につながった要因の一つであることは間違いない」と指摘した。今後、金融機関が金利を上げることも予想されることから「住宅ローンなどの返済の負担が増え、投資にはより慎重さが求められるため、市場が冷え込む可能性もあるだろう」と影響を警戒した。

 為替が円高傾向に振れることによるインバウンド(訪日外国人客)需要への影響について、沖縄ツーリストの東良和会長は「そもそもインバウンドはコロナ流行以前ほど戻っていない。日本はもともと物価が安く、需要に影響はないだろう」と冷静に受け止めた。 (小波津智也まとめ)