食べ物に困ったら、いつでもおいで―。那覇市安里で月2回、ボランティア団体「ゆいまーるの会」が、子育て世帯を対象に、コメやバナナなど食料品を無償配布している。物価高騰や電気代の値上げで、家庭の負担は増すばかり。食料支援の現場を訪ねると、切実な声が相次いだ。
今月10日、安里八幡宮隣の安里一区公民館。コメ、食パン、カップラーメン、シャンプー、生理用品…。支援物資が到着すると、スタッフが手際良く机の上に並べていく。配布開始の30分前、外では3組の親子が列をつくっていた。
「では始めます!」。午後2時半、嘉手苅直美代表(67)が声をかけると、子ども3人を連れた母親から館内に入った。レトルトご飯とコメ2キロを、子どもを含め訪れた人数分受け取る。他の食材や野菜などは1人三つまで。子どもたちはクリスマスのお菓子をもらってうれしそうだ。
高校1年生から0歳児まで6人の子がいる女性(40)=那覇市=は、コロナ禍で世帯収入が激減したという。ホテルのパートは出勤日が減り、夫も残業とボーナスがなくなった。一方で、モノもサービスも値上がりが続いている。
「もう切り詰められるところがない。子どもたちに我慢させるのがつらい」。食料支援に感謝している。「浮いた分の食費をミルクやおむつ代に当てることができる。本当に助かっています」
食料配布を待つ人は途切れない。高1の男子生徒は、小6の妹と一緒に歩いてきた。母親は仕事で、高3の兄はアルバイト。毎回、妹と2人でやって来て、コメやレトルト食品を受け取って帰る。家計の管理も任されているといい「何もかも値上がりして、食費が一番きつい。コメが本当にありがたい」とかすかにほほ笑んだ。
この日は1時間で19世帯50人が利用した。「お金がなくても、ここに来れば食べるものがある」と嘉手苅代表。次回は24日午後2時半~3時半。問い合わせは嘉手苅代表、電話090(3793)7906。 (眞﨑裕史)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつでも利用できる支援を
那覇市安里で食料支援を行う「ゆいまーるの会」・嘉手苅直美代表の話 牧志公園で生活困窮者への食料支援を行うとともに、子どものいる困窮世帯にも食料を届けていた。ただ、それでは足りないのではないか、困っている子育て世帯がいつでも利用できる場が必要ではないか、と考えた。今年5月に立ち上げて、毎月第2、第4土曜日の午後2時半~3時半、配布している。
毎回25世帯くらい、60人前後が来ている。利用しやすいように、名前や住所などは尋ねない。困っていない人は並んでまでは来ない。収入が増えないのに物価は上がる一方で、子育て世帯の困窮度は増している。
お母さん方が徐々に明るくなっていく姿を見ると、本当にうれしい。ひもじい時、ここに来れば食べる物はある。親子が安心できる場所として、今後も続けていきたい。