【記者解説】段違いの「南西シフト」、「地元理解得る」言葉の裏側で着々と防衛予算編成、既成事実化へ


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防衛省(資料写真)

 2023年度の防衛省予算案には、国家安全保障戦略など新たな安全保障関連3文書で打ち出した防衛力強化の方針が色濃く反映されている。沖縄を含む南西地域の防衛体制増強について県民の理解を得たとは言えない状況下で、基地機能の強化や新設を早くも予算案に盛り込んでいる。

 防衛省・自衛隊はこれまでの「南西シフト」と比べても段違いで、実際の戦闘を県内で想定している。

 陸上自衛隊第15旅団がある那覇駐屯地の司令部地下化は、ミサイルなどの攻撃を受ける事態を想定していることがある。南西地域における戦闘で負傷者を想定し、自衛隊那覇病院を有事に増床できる仕様にも改築する。

 装備や物資の補給拠点を沖縄市に整備する計画も、人員や物資の輸送・供給が課題となる離島での戦闘をできるだけ長く継続できるよう備蓄体制を強化する狙いがある。

 安保3文書の内容は16日の閣議決定まで公表されず、県民の暮らしや安全に大きく影響する内容に反発や困惑が上がっている。浜田靖一防衛相は20日の記者会見で、「地元自治体にも説明しながら、地元の皆さまから理解・協力を得られるよう丁寧な対応に努めていきたい」と答えていた。

 だが、ほぼ同時に進められた予算編成で自衛隊の部隊新編や追加に関する費用を盛り込んだ。県民の理解に関わりなく、既成の事実として増強計画の実行に移っている。

(明真南斗)