沖縄県内の市町村、住民保護に向けた情報不足訴え 「有事の際の避難は困難」の指摘も<国民保護・沖縄県内自治体アンケート>


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防衛省(資料写真)

 南北約400キロ、東西約1千キロの広範な海域に多くの有人離島が点在する沖縄。有事の際の住民避難を担う市町村からは「国・県が準備できる民間輸送力、海上保安庁、自衛隊などが協力できる範囲が示されていない」(豊見城市)と「どのように保護するか明確に示してほしい」(大宜味村)などと情報不足を訴える声があった。一方、多くの自治体から「県全域で戦闘(有事)が起きた場合、避難することは困難と考える」(本部町)などと有事の住民避難は現実的ではないとの意見も多く寄せられており、紛争回避に向けた外交努力を最重要視する意見も多い。

 糸満市は尖閣諸島周辺の中国公船の領海侵犯が常態化し、防衛に対する関心は高まっているとした。その上で「国の防衛は外交・経済・財政など多角的な視点で議論が必要であり、軍事力は最終手段だと考える。政府にあっては、対話や相互理解の重要性を強く認識し、紛争を未然に防ぐ外交努力を求めたい」とした。

 市の中心部に米軍普天間飛行場が立地する宜野湾市は、避難誘導の際の課題として多くの市町村が挙げた「観光客」と「輸送力の確保」のほか、「米軍基地が立地することによる避難誘導」「基地従業員の避難誘導」も挙げた。攻撃される可能性もある米軍基地を抱えた上、住民のほか、市外から訪れる観光客や基地従業員の避難も考慮しないといけない。同市は「有事が起こらない外交政策に取り組んでほしい」とした。

 県は12月後半、消防庁と市町村の担当者を招いて研修会を実施。市町村からは「台湾有事のイメージや規模感に実感が湧かない」などの意見が上がったという。

 県防災危機管理課によると、政府は特定の国名を挙げて有事を想定しているわけではなく、詳細なシミュレーションを示すのは困難とした。担当者は「市町村レベルで台湾有事の対応は考えられないが、国の対応を待っていても取り組みは進まない。市町村にはまず、小学校区や公民館区などの避難の単位と集合場所、輸送方法などを設定してほしいと要望している段階だ」と話した。

(梅田正覚)