激戦地土砂採掘に抗議 市民ら「魂魄の塔」で集会 新基地「戦没者冒涜」


社会
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戦没者の遺骨が混じる可能性がある鉱山からの採掘に反対する集会を開く人たち=4日午前、糸満市米須の「魂魄の塔」(喜瀨守昭撮影)

 沖縄戦跡国定公園内にある糸満市米須の鉱山から土砂を採掘する計画に対して、沖縄戦戦没者の遺骨が混じる可能性があると反対する市民が4日、鉱山にほど近い慰霊碑「魂魄(こんぱく)の塔」前で集会を開き、沖縄戦体験者・遺族を含む約150人が参加した。集会を呼び掛けた沖縄戦戦没者遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは「戦争で殺された人々の遺骨が戦争のための(辺野古)新基地の埋め立てに使われようとしている」と指摘。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を進める防衛省を「計画を立てたこと自体が戦没者への冒涜(ぼうとく)だ」と糾弾した。

 併せて、具志堅さんは玉城デニー知事に戦没者・遺族の立場に立った上での再考を求める考えを強調した。集会では、ガマフヤー支援者の会の北上田毅さんがこれまでの経緯を解説。沖縄戦で家族を亡くした体験者が「戦後77年経っても遺族の痛みは消えず続いている」「家族が眠る場からの採掘は絶対に許せない」と計画阻止を訴えた。

 鉱山からの採掘を計画している沖縄土石工業の永山盛也代表は4日、本紙の取材に対し、糸満市の条例などに基づく審査、市を介して県農林水産部農政経済課に提出した農地の一時転用申請などの手続きが整った後、早ければ1月下旬から2月上旬にも仮設道路の整備、3月上旬には琉球石灰岩採掘を開始するとの見通しを示した。

 鉱山からの採掘計画については、業者が2020年12月、自然公園法に基づく届け出を糸満市に提出。県は21年5月、採掘前に遺骨の確認と収集などを求める措置命令を業者に発出した。これに対し業者は県の措置命令を違法として総務省公害等調整委員会(公調委)に不服を申し立てていた。

公調委は22年6月、遺骨発見時の工事一時中止と収骨を求める合意案を提示し、県と業者が受け入れた。業者は12月1日、合意案を反映させた再届け出を提出し、県は28日に受け付けていた。
 (照屋大哲、安里周悟)