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「沖縄から空腹の子どもをなくす」食事提供プロジェクト、原点は少年時代のタコライス 山川宗徳さん(タコライスラバーズ代表)<夢かなう>


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3年目の目標を熱く語るタコライスラバーズの山川宗徳代表=那覇市泉崎

 「沖縄から空腹の子どもをなくす」をテーマに、子どもたちに無料で食事を提供するプロジェクト「タコライスラバーズ」が2020年12月に発足してから約2年。協力したいと思った人が登録店舗で「みらいチケット」を購入、店内の掲示板に貼られたチケットを使って子どもたちがタコライスやカレーを無料で食べることができる仕組みだ。県内大手スーパーでも導入され、支援の輪は着実に広がっている。

 代表の山川宗徳(やまがわむねのり)さん(42)は、2年前に警察官を退職、タコライスラバーズの活動に奔走してきた。警察官時代には非行少年を何人も補導した。万引などに手を染める少年たちの中には「家に食べ物がなく、つい盗んでしまった」という子も少なくなかった。

 金武町出身の山川さん。裕福ではない家庭に育ち、空腹を抱える少年時代を過ごした。近所のパーラーの店主がくれるタコライスに幾度となく助けられた。取り締まりの現場で「非行をなくすにはまず空腹にさせないこと。根源は貧困にある」と感じ続けていた。

 県内の子どもの貧困率は全国の約2倍。問題は深刻だ。子どもたちのために個人でもできることがあるのではと考えた時に思い浮かんだのは、かつて振る舞われた善意のタコライスだった。退職して活動を開始。空腹に耐えかね盗みを犯すことがないよう、まずは子どもたちのおなかを満たしたいと考えた。

 最初は1人で抱え込んで赤字がかさんだり、店舗からの問い合わせに十分対応できなかったり「手探りの状態で始めて、失敗も多く落ち込むこともあった」。

 初年度は貯金を切り崩して充てた。「貧困をなくそうと活動しているのに自分が苦しくなっては本末転倒」と自虐的になることもあった。

 地道な活動に支援は広がり出す。クラウドファンディングや毎月定額の寄付を募るサブスク募金などで経費が集まり、知人らが事務局や広報チームを立ち上げ活動に加わってくれた。プロジェクトは今、数十人の仲間がいる。

 約30店舗で始まった協力店は182店舗に。タコライスだけでなく、店によってはメニューも広がった。最終的には県内263校ある全ての小学校校区にみらいチケット協力店を1店舗以上確保することが目標だ。年内の達成を目指す。

 パーラーの店主に気にかけてもらった思い出が活動の原点にある。「子どもたちには、もらった愛情をまた次の世代へと受け継いでほしい」。思いやりの連鎖にも期待を込める。

(普天間伊織)


 タコライスラバーズの問い合わせは山川さん(電話)080(2697)1226。