【寄稿】沖縄の人権条例骨子案、ヘイトに明確な罰則規定を 師岡康子氏(弁護士)


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沖縄県庁

 県が差別的言動(ヘイトスピーチ)を規制するために制定を目指す、県差別のない人権尊重社会づくり条例(仮称)骨子案の県民意見募集が6日で終了する。骨子案では罰則がないため、市民団体や識者などは刑事罰や行政罰の設定を求めている。ヘイトスピーチ問題の第一人者であり、同問題に関する著書もある師岡康子弁護士に罰則の必要性について寄稿してもらった。

 県の条例骨子案ではヘイトスピーチに対し氏名公表制度が提案されている。しかし、那覇市庁舎前で5年半もヘイト街宣を繰り返してきた人たちは、氏名と顔を出しているのでそれでは止められない。

師岡康子弁護士

 現在、那覇市庁舎前では市民が毎週集まり抗議して止めているが、他の場所では行われている。人種差別撤廃条約等により行政には差別を終了させる義務があり、県が明確な禁止規定と罰則規定で止めるべきだ。東京都の人権条例により何度もヘイト認定され公表されている人たちが、川崎市内では、刑事罰付きの差別禁止条例があるため、あからさまなヘイトを行わなくなっており、実効性は明らかだ。

 現在、沖縄県と同様に在日外国人の集住地区がない神奈川県相模原市でも、市の審議会が条例に罰則付きのヘイト禁止条項を入れる答申を作成中だ。

 罰則の中でも、香川県観音寺市の公園条例のように、刑事罰ではなく秩序罰(過料、5万円以下)という選択肢もある。

 他方、罰則付き規制が乱用されないように、川崎市の条例のように第三者機関のチェックが重要だ。

 また、骨子案では、差別禁止規定に違反した場合の被害者の救済手続きがない。被害者が裁判を起こすのは非常に大変であり、東京弁護士会の人種差別撤廃モデル条例案のように、専門的な第三者機関による救済手続き制度を設けてほしい。

 そもそも県が計画的に実効性ある施策を策定し、推進するためには、専門的な第三者機関が、調査・政策提言・救済などの権限を有することが重要である。

 委員は単なる有識者ではなく、差別撤廃問題の専門家とし、うち一定数は被差別属性を有するようにするのが適切だ。