【識者談話】那覇ミサイル避難訓練、実効性に疑問 佐藤学(沖縄国際大学教授)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮、中国の軍事的脅威に対する国民の不安がある中で、国が弾道ミサイルを想定した住民避難訓練を再開したり、安全保障関連3文書を決定したりしたことは無関係とは思えない。危機が迫っているという空気を醸成し、国の言うことを受け入れさせるための宣伝だと考えている。

 地下駐車場はミサイル被害を防げるように造られていないし、那覇で新たにシェルターを造っていくことも難しい。シェルターに避難する構えがない中での訓練に果たして実効性があるのか。

 米国でも1950年代に核兵器が飛んできたら机の下に逃げ込めという宣伝映画を作ったが、意味はなかった。実際に効果があったのは、核戦争をしないという政策だけだ。避難訓練は被害を止めることにならないし、訓練が定期的に続けば、行政も市民もその(軍備増強の)方向に気持ちがいくのではないかと懸念される。立場を超えて「沖縄が犠牲になることを想定しながら、米国と一緒に戦争の準備に向かうのはやめてくれ」と訴えていくべきだ。

 訓練より外交でミサイルを打たせない環境をつくっていくしかない。北朝鮮をけん制する上では中国との関係も大事になってくる。韓国との連携も重要だが、日韓両政府の関係が今うまくいっていない。しっかり外交努力をしないといけない。

(政治学)