「平和」が経済や観光を振興 玉城知事ら「沖縄のソフトパワー」でトーク 那覇で北前船寄港地フォーラム


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「沖縄のソフトパワー」をテーマに語る玉城デニー知事(左)と富田めぐみ氏=3日、ロワジールホテル那覇(大城直也撮影)

 江戸~明治時代に北海道から九州を結ぶ物流ネットワークを形成した北前船の寄港地だった地域を中心に、連携や交流による活性化を図る「第32回北前船寄港地フォーラムin Okinawa」(同実行委員会主催)が3日、ロワジールホテル那覇で開幕した。「北前船、新たな船出へ~万国津梁の地、沖縄からアジア、そして世界へ」をテーマに、トークセッションや講演が行われた。沖縄の歴史や文化に触れながら、地域振興や観光産業の新たな在り方などを探った。

 「沖縄のソフトパワー」をテーマにしたトークセッションでは、玉城デニー知事と舞台演出家の富田めぐみ氏が登壇した。

 玉城知事は、琉球王国が交易などを通して貪欲に諸外国から学んでいった歴史に触れ「その地にあったものを持ち帰ってチャンプルーとして独自の文化にした」と強調する。「文化を尊重し合い、平和だからこそ経済や観光を振興できるという考えを皆さんと共有したい」と述べ、ソフトパワーを生かした地域間連携による活性化を呼びかけた。

 琉球芸能を取り入れた演出で、海外の演劇祭でも好評を博した富田氏。公演が人々を魅了する理由に「喜怒哀楽から生まれる、うそのない芸能が今日まで続いているからだろう」と推測する。「苦しいとき、悲しいときこそ歌い踊る。そうして作り上げてきた文化が、自らを支える力にもなっている」と持論を語り、育まれたソフトパワーのたくましさを指摘した。

 琉球歴史家の上里隆史氏は北前船と琉球との関係性について基調講演し、北前船によってもたらされた昆布が琉球王国の交易に深く結びつき、食文化として現在まで続く大きな影響を与えていることを解説した。

 他のトークセッションでも、食文化や工芸の観点から交流によって生まれた地域資源の価値について意見が交わされた。

 最終日の4日は伝統文化、観光、産業の3分野に分かれ視察が行われる。

(小波津智也)