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憲法を基に幸せを守る法律を<伊是名夏子100センチの視界から>141


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イラストも描き、手作りした結婚式の招待状

 「『けんぽうが、やくにたったことってないなあ』もし、そうおもったら、あなたはつよくて、おおくのひとのがわにいる。けんぽうがひつようなのは、よわいがわにいるひとたち。こころやからだにハンディキャップをもっていたり、とてもまずしかったり、さいがいでいえをなくしたり、いじめられたり、さべつされたり…。そういうひとたちが、みんとおなじにせいかつできるように。みんなとおなじにたいせつにされるように。けんぽうはちからをだす」。「あなたこそたからもの」(大月書店)の一節です。

 車いすの私が階段しかなくて駅を利用できなかったり、住む家が見つからなかったりした時、まわりから「かわいそうだね。大変だね。でも仕方ないよね」と言われることがあります。誰もが幸せに暮らす権利があり、それは憲法で保障されているのに、どうしてそれが伝わらないのだろうと、もどかしい気持ちになります。しかしこの絵本を読んで、憲法や人権を身近に感じない人は困ることが少なく、幸せに暮らせているからなのかもしれないと気づきました。

 私たちが普段、空気を吸っていることを自覚することはないけれど、酸欠状態になってはじめて酸素や呼吸のありがたさが分かるように、憲法の大切さに気づかないことは、ある意味幸せなのかもしれません。しかし人は誰でも事故にあったり、いじめられたり、とてつもない悲しみに襲われたりする可能性があります。命を奪うための戦争だって起きるかもしれません。すべての人の幸せを保障する憲法について身近に考えたいですね。

 先日、岸田首相は同性婚について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁しました。絵本の言葉を借りるのなら「つよくて、おおくのひとのがわにいる」からこそ、憲法を引用するのではなく、価値観に置き換えて考えるのかもしれません。しかし現実として社会はすでに変わり、選択的夫婦別姓や同性婚を求める人たちはたくさんいます。それが認められないのは法の下の平等や幸福を追い求める権利に反しているとして、裁判も次々に起こっています。

 誰もが自分らしく、幸せに生きることが保障されている憲法。それが変わることなく、守られ、それに基づいた法律が作られることを願います。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。