ドライブ中に見える街路樹、美しい?沖縄県が初策定「街路樹ガイドライン」とは


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強剪定された街路樹=2日、那覇市久茂地

 草木が生い茂る沿道の美観を保とうと、県は2023年度、植栽する街路樹の樹種や刈り込み方法などを定めた「街路樹維持管理ガイドライン(案)」を初めて策定する。ガイドラインでは病害虫対策などで多くの枝を切り落として切り株状にする「強剪定(きょうせんてい)」を取りやめる方向で検討している。場所の特性に応じて適正な樹木を植える「適地適木」の考え方を柱の一つとし、美しい道路景観の形成を目指す。

 県によると、現在県内で街路樹として植えられている樹木は約70種類に上る。近年は巨木化による道路隆起や病害虫被害、落ち葉が課題となっている。病害虫被害や落ち葉の対策として、県は多くの枝葉を刈り込む強剪定によって街路樹を手入れしている。しかし枝の切り口が大きくなることで木が弱る原因となるほか、樹形が悪化する原因ともなっている。

 県はガイドライン策定と並行して24年度までに、街路樹の樹種や植栽時期について記載した「街路樹データベース(DB)」を整備する方針だ。県は街路樹管理にガイドラインとDBを組み合わせることで、職員の負担を軽減し、より効果的な管理を目指す。DBは一般には非公開の予定となっている。

 県は昨年9月に策定した世界水準の観光地にふさわしい沿道景観の形成を目指す「美ら島沖縄花と樹木の沿道景観計画」に基づき、ガイドラインなどの作成を進める。同計画では、街路樹が自然な樹形となるような剪定や、手入れの頻度を上げるなどの基本方針を定めた。

 亜熱帯性気候の沖縄では年中通して温暖な気候が続くため、「牧草生産力」が全国水準の3倍を誇り、草が伸びやすい。さらに、本土復帰後の集中的なインフラ投資を背景に、道路の総延長に対する植樹帯設置の割合「道路緑化率」は全国一位の48.8%(全国平均9.7%)だ。こうした状況から県民や観光客から雑草の繁茂に対して「見苦しい」などとの苦情も多く、行政は対応に追われていた。

 街路樹の管理に携わってきた、県造園建設業協会の下地浩之会長は県が強剪定を取りやめる方向性を示したことに対して「改善に向かうのではないか」と期待を示した。同協会の森根清昭副会長は、街路樹の管理に県民の理解も必要として「県民も街路樹をかわいがってほしい」と訴えた。

 県はガイドラインについて、本年度末に開く策定委員会で修正点や内容をとりまとめる。その後23年度前半に県民意見を募集するパブリックコメントを実施し、23年度中の策定を目指す。
 (武井悠)