SOS出せず「猫助けたい」思い裏目に 多頭飼育崩壊の経緯、南大東の女性語る 沖縄


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
多頭飼育に至った経緯や猫への思いを語る女性=14日、那覇市泉崎の琉球新報社

 昨年11月末、南大東村の家屋で、劣悪な環境で猫を飼育したなどとして、動物愛護法違反容疑で逮捕=後に罰金10万円の略式命令=された50代の女性が22日までに、琉球新報の取材に応じた。「多頭飼育崩壊」に至るまでの経緯や思いを、時折涙をこらえながら打ち明け、人も猫もどちらの命も守られるよう「SOS」が出せる社会を強く望んだ。

 女性は島から那覇署に移送され、留置場に20日余り拘留された。その間「猫への申し訳なさと悔しさ」が込み上げ涙した。現在は沖縄本島に暮らす会社員の一人息子宅に身を寄せている。逮捕時を振り返り「ショックだった。けど、しょうがない」と力なく語った。

 現場となった家屋は飲食店や住宅が立ち並ぶ島の中心地にあった。トタン屋根の鉄筋コンクリート造りの2階建て。約80坪の広さだった。屋内は女性がSNSを通じて知り合った全国各地の人たちから寄せられた物資が散乱し、猫のふん尿が堆積していた。

 SNSの投稿は知人の勧めで昨年6月から始めた。当時、農業をしていたが、雨天時は休みになるため収入は少なかった。猫のえさ代などをまかなうためにSNSで寄付を呼びかけていた。

 女性は本島出身。息子が幼いころに離婚し夜の飲食店に務めながら生計を立ててきた。南大東島に渡ったのは15年程前のこと。知人から島で夜の飲食店の仕事を紹介され、息子と当時飼っていた猫3匹とともに移住した。島内で何度か住まいを変えながら暮らす中で、飼い猫が出産したり、女性や息子が野良猫を拾ってきたりして、猫が増えていった。去勢手術をするには本島に行かないと行けず、全てに施すのは難しかった。時には、島民から「猫を助けてほしい」と預けられることもあった。断っても自宅前に猫が置かれていた。

 島に来て7~8年程たったころ、あの家屋に移った。後に「多頭飼育崩壊」の現場となる建物だ。「猫を助けたい」との思いで、野良猫を家屋に連れ帰るうちに、飼い猫も合わせ一時は、最大60匹程に増えた。猫の増加と比例し、家屋内の衛生環境は悪化し続けた。主な原因として、女性はごみ収集車がごみを持っていかなくなったからだと語った。

 「散らかっているという自覚はあった」と女性は当時を思い返し、反省の色をにじませる。心配して「掃除しようか?」と声をかけてくれる島民もいた。いまになって思えばその声に「甘えていればよかった」と後悔もある。女性を厳しい目で見る島民がいる一方、風呂をかしたり弁当を差し入れたりして、温かく接してくれる人も少なからずいた。それでもどこかに「孤独感」はあったという。

 多頭飼育状態に陥っても「どういう支援があるのか、どこにどう頼ればいいのか、わからなかった」。女性は自身の反省を踏まえ、多頭飼育に至る前に当事者が声を上げたり、支援を受けられたりする社会になることを願った。