冬に多いカンムリワシの交通事故 石垣市や沖縄県などが「連絡会」 今年すでに3件発生


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
交通事故で右翼上腕骨を骨折し、救護されたカンムリワシ=3月19日、石垣市(土城勝彦獣医師提供)

 【石垣】沖縄県石垣市内のカンムリワシの交通事故防止に向けて、自然保護、道路管理などを担う、市、県、国、民間団体が連携した「連絡会議」が3月24日に発足し、石垣市役所で第1回会議を開いた。オンラインを含め約20人が参加し、救護の現状や事故対策について意見を交わした。これまで保護や保全に関して各機関が連携した会合はあったものの、交通事故防止に特化した会議は今回が初という。

 担当者は事故防止策の一つとして、車両の減速だけでなく「カンムリワシに興味を持って、守らなくては、という気持ちになることが大切だ」と呼びかけている。

 事務局を務める市教育委員会文化財課のほか、環境省、市環境課、八重山署、八重山土木事務所、動物病院、県自然保護課(オンライン参加)など12機関・団体の担当者が出席した。

 県野生動物救護獣医師でカンムリワシの救護を担っている土城(どき)勝彦さんが、スクリーンを使用して現状を説明した。

 カンムリワシは環境省の絶滅危惧種に指定され、絶滅の危険性が最も高いレッドリストIA類に分類されており、市内に100~150羽しかいないという。

カンムリワシの交通事故防止に向け意見を交わした連絡会議のメンバー=3月24日、石垣市役所

 だが近年、交通事故に遭う個体が増えており、重症度の高い事例が多い。11月から3月の冬場や早朝に事故が多発する傾向がある。2022年1~3月に事故が続発し、市教委や環境省などは連名で「カンムリワシ交通事故非常事態宣言」を発出した。それでも通年で13件の救護事例があり、そのうち10件が交通事故が原因で、死亡事例は8件に上った。今年に入っても既に3件の事故が起きている。

 土城さんと保護団体「カンムリワシ・リサーチ」の渡久山恵さんは、車両の法定速度順守の徹底だけでは事故は防げないとして「(事故多発地点での)道路標識設置やカンムリワシの行動を知ることが重要だ」と訴えた。

 他機関の担当者は「これまでのデータを分析し生かしたい」「速度を落とす取り締まりなどに取り組んでいきたい」と話した。連絡会議は今後、年に1回、10月の開催を予定している。

(照屋大哲)