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沖縄、意外と降る「雨の島」 ウチナーンチュは傘をささない?「あるある」の真相に迫った【WEBプレミアム】


この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬
資料写真

 今年は5月18日に梅雨入りした沖縄。大型連休中には多くの観光客でもにぎわったが、照りつける太陽に晴れた青い空と海、年中真夏のように暑いーというようなイメージを持つ人も多いのではないだろうか。しかし、海に囲まれた亜熱帯の沖縄、実は、快晴日数は全国でも少なく、年間降水量は多い。意外と雨が多い島なのだ。そして「沖縄の人は傘を差さない」という「沖縄あるある」も存在する。沖縄と雨にまつわるあれこれをまとめた。

 

(慶田城七瀬)

人気の傘

 天気と雨にまつわる各種統計データからは、傘が必要な沖縄の天気の実態が見えてくる。

 まずは快晴日数。2022年3月版の「100の指標からみた沖縄県のすがた」によると、沖縄県は年間で7日間で全国39位、年間日照時間も1666時間で47位。

 次に降水量。沖縄県の年間降水量は2638ミリ、都道府県別では、1位の宮崎県3046ミリに次いで2番目に多かった。

 傘の購入量はどうか。総務省統計局の2021年家計調査によると、都道府県の県庁所在地別1世帯(2人当たり)の年間品目別支出金額では、那覇市における1年間の傘購入金額は976円で全国13位と上位に近い。コンビニや格安ショップではビニール傘が複数本買える金額だ。

 実際の売り場の様子はどうか。デパートりうぼうの雨具売り場担当者よると、売れるのは「晴雨兼用」が多いそうだ。

沖縄の傘は日傘との兼用が主流と説明する傘売り場担当の渡久知志麻さん=4月18日、那覇市久茂地のデパートリウボウ

 担当者の渡久知志麻さんは「夏は日差しが強いので日傘をメインにカタブイが来たら差すという感じだと思います」と話した。雨傘のコーナーは、フロアの一角にあるが、晴雨兼用の傘はフロアの中央付近に目立つように並べてられていた。

車社会の影響も
 
ウェザーニュースが2022年5月に実施したアプリユーザー対象のウェブアンケートに気になる結果があった。「どのくらいの強さの雨から傘を差すか」との問いに対する回答を都道府県別でみると、「弱い雨でも傘を差す」のが東京で73%であるのに対し、沖縄は48%と低かった。過半数の人が「弱い雨なら差さない」ことが伺える。那覇市の方から「ずぶぬれにならない限りはできるだけ差さない」との回答も寄せられたという。

 さらに実際に周囲の人に聞いてみた。ウチナーンチュ率約8割の琉球新報社員らにアンケートをとってみると、雨の日に傘を差さないと答えたのは25%、雨の降り方によっては差さないと回答した5%を含めると約3割が「差さない」と回答した。差さない人に理由を尋ねたところ、以下のような声が聞かれた。

 ・「車で移動することが多いから。持ち歩くのも煩わしいし、少しくらい濡れてもあまり気にならない」(40代女性)

・「街中で差している人を見かけるまでは差さないという自分ルールがある。「これくらいで差しているのか」と周りに思われるのがなんだか恥ずかしいから」(20代女性)

・「帰ったらお風呂に入るから」(50代男性)

・「傘を持ち歩くのがめんどくさい。外出先で置き忘れる。沖縄では濡れてもすぐ乾くし、そもそも歩くことが少ない」(40代男性、20代女性)

 また、県外と沖縄の違いに触れた県外出身者の声も。

・「地元では傘を差さずに雨の中を歩いているとぎょっとされて、二度見されたり振り返られたりするので、誰も気にしない沖縄はかなりストレスフリー」(40代女性)

どうやら「沖縄あるある」の背景には、

車で移動する、

沖縄の雨はすぐ止む、

細かいことを気にしていないー

などの理由がありそうだ。

すぐ止む「カタブイ」

 晴れた日に急に雨が降り出したが、すぐ近くの別の場所は晴れていて、雨宿りしていたらすぐ止んだーという経験をした人もいるのではないだろうか。沖縄の夏の暑い日に降る雨は、局地的に短期間に降る「カタブイ(片降り)」と呼ばれる。

 高気圧に覆われて風が弱く晴れる日の午後に、温かく湿った空気が上昇して局地的に積乱雲が発生し大雨になる「不安定性降水」。ある場所では大雨警報を発表することもあるほど激しく降っているが、すぐ近くでは晴れているという光景がよく見られる。

 気象台の解説資料によると積乱雲の寿命は約30分程度とされる。時間や空間の規模が小さい現象なので的確に予測するのが難しいという。

気象情報へのアクセスが身近に

 天気を伝える気象予報士の目には沖縄の雨事情、どう映っているのだろう。琉球朝日放送で気象キャスターを務める気象予報士の仲宗根朋美さんに聞いた。

「傘を差さない時というのは、天気予報にはなかった急な雨が降った時ではないでしょうか。この仕事をしているからか、周りにはちゃんと差してる人が多い印象です」

 

天気予報を伝えるリハーサル中の仲宗根朋美さん

 仲宗根さんの実感では「降水確率40%ぐらいから傘を持ち始める気がします」とも。

近年、ネットやスマホアプリで雨雲レーダーなど天気の情報にアクセスしやすくなったことが背景にあると感じている。

気象予報士になって10年になる仲宗根さんは、天気に関心を持ってもらおうと、贈り物には傘を意識的に選ぶようにしている。贈った相手からの反応も良いそうだ。おしゃれな傘を贈られたら、雨の日が待ち遠しくなりそうだ。

 仲宗根さんは、テレビ番組以外でもTwitterでこまめに沖縄の天気について投稿している。

ある日の投稿では、蒸し暑くなる予報に「風通しのいい服装を」、土砂降りになる見込みから「大きめの傘を」など。

天気図や降水確率などより具体的な情報を発信するテレビでの発信とはまた違って、天気をより身近に感じられるような投稿を心がけている。

「身近な表現を入口に、暮らしのどこかに役に立てる情報を届けられたらいいなと思います」

気象予報士の仲宗根朋美さん

 全国で最も早く梅雨の時期を迎えた沖縄。一度大雨や激しい雨になれば低い土地での浸水や、河川の増水につながることもある。

仲宗根さんは「経験からすぐに止むはずと思いがちですが、自分の感覚で判断せずに天気予報をまめにチェックしてほしい」と呼び掛けた。