陸自ヘリ事故1カ月 飛行記録を回収し原因究明へ 再発防止、住民へ説明責任は


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 宮古島市沖で発生した陸上自衛隊ヘリコプター事故から6日で1カ月が経過した。当初は捜索が難航していたが、2日に機体主要部や、直前の飛行状況が記録されているフライトレコーダー(飛行記録装置)が回収されたことで「大きく進むことになる」(陸自関係者)。防衛省は原因究明に向けてデータ解析を進めるとともに、まだ見つかっていない搭乗者4人の捜索も急いでいる。

 熊本県を拠点とする第8師団や宮古警備隊の幹部ら10人を乗せた陸自のUH60JA多用途ヘリ1機は6日午後3時46分に航空自衛隊宮古島分屯基地を離陸した。離陸から10分後の午後3時56分、ヘリの機影がレーダーから消えた。

 第8師団は、有事の際に担任地域を離れて必要な場所へ展開する「機動師団」に位置付けられる。事故当日、幹部らは南西諸島での活動を想定し、島々の地形やインフラなどを視察しようとしていたとみられる。

 陸自は事故のあった4月6日に、小林弘樹陸幕副長をトップとして事故調査委員会を発足させたが「ほとんど何も進んでいない」(防衛省関係者)。事態解明に欠かせない機体の主要部やフライトレコーダーが見つかっていなかったためだ。

 関係者によると、フライトレコーダーから情報を抽出して解析するまでに数カ月かかるとの予測もある。防衛省の訓令で事故調査委員会は原則として4カ月以内に防衛相へ報告書を提出することが定められている。

 防衛省関係者の一人は「調査の基となる機体とレコーダーの回収までに1カ月かかった」とし、調査期間が延長される可能性に言及した。

 事故原因の究明には、フライトレコーダーからどの程度の情報が取り出せるかが鍵となる。一般的にフライトレコーダーは水深6千メートルの深海圧を受けて30日間、耐えうる丈夫さで設計されている。今回の事故機が沈んでいた地点は水深約106メートルだったことから、自衛隊関係者は「記録は取り出せるのではないか」と期待を込める。

 住民が暮らす島々に囲まれた海域で発生した事故。レーダーから機影が消えたのは伊良部島からわずか約3キロの場所だった。住民への説明責任を果たし、再発を防ぐためにも、徹底した原因究明が必須となる。 (明真南斗)