視覚障がいにデジタルの壁 操作面での「困った」7割 音声ソフト購入費も負担に 当事者団体「支援体制の強化を」


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 スマートフォンやパソコンなどデジタル機器の利用に関し、全国団体「日本視覚障害者団体連合」(日視連)が当事者853人に実施したアンケートで7割近くが操作などのスキル(技能)面で困難を抱えていると答えたことが5月31日、分かった。デジタル化が進む中、苦手とされる高齢者だけでなく障害のある人への支援の在り方が課題となる。

 視覚障害者は文字を読み取ったり、画面を操作したりするのが難しいため、デジタル機器を使う際は音声読み上げや音声入力のソフトウエアを使うなどしている。回答では、ソフト購入などに関しても5割超が経済的に困難と回答した。

 調査は2022年1~2月に加盟団体やインターネットなどを通じて呼びかけ実施した。

 スキル面で「困っている」と回答したのは26.8%。「やや困っている」の41.6%と合わせ、計68.4%が困難さを感じていた。

 スマホやパソコンを使っている人に、具体的に困っていることを複数回答で尋ねたところ「初期設定が難しい」(62.1%)、「音声出力が不十分」(61.2%)のほか、「サポートが不十分」(48.7%)と支援態勢の不十分さをうかがわせる回答も目立った。

 行政や企業のホームページに関して、読みにくいなどと回答した人は計83.0%に上った。音声読み上げソフトに十分対応していないといった問題が背景にある。

 ソフトの購入だけでなく、音声出力用のスピーカーやイヤホンなども別途必要になることが多く、経済的な負担に「困っている」「やや困っている」と回答したのは計54.8%だった。支援を受ける際の課題では「住んでいる地域に支援施設や団体がない」との回答が多かった。

 調査結果は、有識者や日視連の関係者らが分析。日視連は政府に対し、図書館などを活用した地域の支援体制充実を図った上で「すべての情報や手続きをデジタル化するのではなく、点字や音声での情報提供に努めるべきだ」と提言した。

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<用語>視覚障害者とデジタル機器

 厚生労働省の2016年の推計調査では、障害者手帳を持つ視覚障害者は全国に約31万人いる。信号機の音響用押しボタンや駅の券売機の点字など、聴覚や触覚を通じて周囲の情報を得ることが多い。最新の情報通信技術(ICT)機器はスマートフォンやタッチパッドなど視覚に依存した機能が多い。使いこなすには専用ソフトやアプリに習熟する必要がある。
(共同通信)