音のない世界から勇気を伝える 聴覚障がいのある春日晴樹さん講演 努力と思いやりの心学ぶ 豊見城・長嶺中


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春日晴樹さん(右端)に手話で自己紹介する西銘里彩さん(左端)=5月19日、豊見城市立長嶺中学校

 【豊見城】豊見城市立長嶺中学校(與那覇正樹校長)で5月19日、生まれつき耳が聞こえない春日晴樹さん(40)を講師に迎えて「はるの空 音のない世界を生きて」をテーマに、教育講演会を開催した。障がいがあっても夢や目標を実現するために諦めず努力することの大切さや、悩んだり困ったりしている相手に寄り添い、思いやりの心で接することの大切さを春日さんの生き方を通して学んでほしいと、全校生徒を対象に実施した。

 春日さんは東京都出身。高校卒業後5年間の会社勤めを経て「介護福祉士になろう」と決めた。全国各地の専門学校で「耳が聞こえないのにどうやって授業を受けるのか」と断られ続けたが、沖縄の学校が受け入れてくれた。春日さんは「勉強は大変だったけど学校は楽しかった」と振り返った。介護福祉士の資格を取得し、県内の障がい者支援施設に勤務し、世界各地を旅した。

 種子島宇宙センターに立ち寄ったことでJAXAの仕事に憧れを抱き、猛勉強の末、採用試験を突破し2015年から3年間、広報部に勤務した。退職後は家族3人で北海道に移住して民泊を営みながら、悩む人の心をケアする「『みみ』のセラピー」を開業し、メールなどを通じて相談業務を行っている。これまでの人生を本にまとめて「はるの空」のタイトルで出版した。現在は「勇気を伝える」をテーマに講演するため全国各地を訪問する。講演の数は200回を超す。

 全校生徒を代表して3年生の猪又碧乃さんは「聴覚障がいを前向きにとらえて、自分から道を切り開く姿がとても印象に残りました」と感想を述べ、お礼のあいさつをした。

 講演会後に春日さんに駆け寄ってきた3年生の西銘里彩さんは手話を使って春日さんに自己紹介をした。「春日さんの話で元気をもらった。ありがとうございました」とお礼を述べた。「将来は手話通訳士になりたい」と夢も語った。
 (喜屋武幸弘通信員)