大国に左右されない政治 国会に求められること 菅原文子さんコラム <美と宝の島を愛し>


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菅原 文子さん

 故ジャニー喜多川氏の未成年者への性的加害は、外圧が掛かりメディアもようやく取り上げた。彼の行為は児童福祉法に抵触し、存命中なら処罰の対象になったのではないか。夢を追い、将来をジャニーズ事務所に預けた年少者たちが、師とも親とも頼む人物から卑劣な性的加害を受け続けた事実は長く放置された。

 新しい音楽ジャンルを開拓した功績はあるが、この成功は多くの職能人たち、作詞作曲、衣装、照明技術者などのセンスと技術の結晶であり、厳しい訓練を経て演技者たちは歌い踊り、ファンを魅了した。これをジャニー氏一人の功績に単純化し大物扱いしたメディアは、彼の長年の性加害に手を貸したに等しい。顔をさらして訴えた被害者たちに寄り添う世論が今、求められている。

 大物には手加減する報道の傾向は、政界においてはさらに分かりやすい。細田博之衆院議長のセクハラ行為、旧統一教会とのつながりはうやむやになった。品格なき人物が今も議長席に座る国会、そこに日本の未来が託されている。

 この政界ニュースにも苦笑いした。菅義偉前首相の胸像が故郷に建ち、除幕式にはニコニコ顔の菅氏の姿があった。胸像を建てた土地は公有地ではなく、建設も浄財で賄った以上、非難される筋合いではないが、上野の西郷隆盛像、渋谷駅のハチ公像、札幌のクラーク像などに比べたら一般大衆に与えるインパクトは小さい。

 銅像の製造費は2千万円程度としたら、土地代、建設費も合わせれば相当な額だ。総額を故郷の公益的事業に「菅基金」として投じたら、いずれ忘れ去られる胸像よりもよほど故郷への恩返しだ。自己顕示欲が公徳心より勝るのが政治家ということか。

 日本の国会議員のレベルが下がる中、一筋の光を見た思いがしたのは公明党が自民党に三くだり半を突き付けたニュースだ。仏教徒を支持母体に持つ平和の党、公明党には本来の使命を果たすために下野し、軍事国化する政治に歯止めをかけてもらいたい。力を増す日本維新の党と連立すれば、政権維持は可能と見ているなら現政権のおごりだ。

 日本は東西で文化や生活意識に違いがあり、同党が東日本一帯で票を伸ばす可能性は限定的だ。凶悪犯罪多発、地震が続発する不安定な日本は、深刻な財政赤字危機を抱えており、米国の意のままに戦争の準備を進めるなど論外だ。内政に総力を振るい国力に明かりが見えれば、世界の信望はおのずとついてくる。

 岸田首相は7月のNATO首脳の総会に出席するらしいが、国力の衰えを日本の軍事力で肩代わりさせたい米国の意向なのか。世界中に米軍基地を置き、広島G7にも核のカバンを持って参加した米国の戦争に加担するなら、戦力に限りがある人口減の日本の若者にとっては悲劇だ。

 ロシアと欧米の緩衝地帯に位置するウクライナと、米国と共産主義国の緩衝地帯に位置する日本は、共通性がある。大国に利用されない国柄を作る見識と覚悟を持った国会議員を次の選挙では国会に送ろう。 

(本紙客員コラムニスト、辺野古基金共同代表)