10代の“先輩”と競い合う69歳の高1生、全国大会へ 那覇工の糸洲さん 県定通制陸上


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男子800メートル、1500メートルで力走した那覇工1年の糸洲朝光=10日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアム(屋嘉部長将撮影)

 69歳の高校1年生、糸洲朝光(那覇工)が800メートルと1500メートルを力強く走り切った。10日に行われた陸上の県高校定時制通信制体育大会で10代の“先輩”と競い合い、両種目とも2人出場中の2位だったが全国への切符を手にした。「もう若くないですね。でも全国大会に出られるなら十分」と苦笑いしながらも、満足そうな表情を浮かべた。

 糸洲が定時制高校に通うのは今回で3回目。最初は15歳の時に神奈川県川崎市の普通科の学校に通った。22歳で沖縄に戻ってからは農業を学ぶために北部農林に通い、その後琉球大学に進学した。その後は与那原町の議員にもなり、現在は建築関係の仕事をしている。

 「80歳過ぎまで元気に仕事をしたい」と資格取得を目指し、4月から那覇工で学び始めた。午前8時から午後5時まで仕事をして、その後は学校で勉強をして、その後走る練習をしている。最初は歩きながら体力をつけて、その後は自分のペースをつかむことを意識した。伊波希龍(北部農林3年)との800メートルは50秒、天久瑞貴(コザ2年)との1500メートルは1分以上の差をつけられた。それでも全国大会出場の権利は手にした。「全国大会までに30秒以上はタイムを縮めたい」と意気込む。

 一番楽しみにしていたという400メートルリレーはメンバーの欠場があり、参加できなくなった。県民大会やマラソンなどの大会に出ていた20~30代より、陸上選手が減っていることも気がかりだという。「もっと陸上が活発になってほしい。来年はチームメートを増やして、リレーに出たい」と力を込める。

 19日には古希の誕生日を迎える。4月から10代や20代にまじり、一緒に勉強し、大会にも出場した。「4月からは健康的だよ。若い人からエネルギーをもらって、自分自身も成長している」。69歳で始まった新しい青春を楽しむ表情は、キラキラ輝いていた。
 (屋嘉部長将)

男子800メートルで優勝した伊波希龍(左)と1500メートル優勝の天久瑞貴(右)ら“先輩”に挑んだ那覇工1年の糸洲朝光(中央)