沖縄文学「なぜ書くか、何を書くか」 38人の原稿まとめ刊行 編者は芥川賞作家の又吉さんら


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「沖縄文学は何を表現してきたか なぜ書くか、何を書くか」

 「なぜ書くか、何を書くか」をテーマに県内の書き手38人の書き下ろし原稿をまとめた「沖縄文学は何を表現してきたか なぜ書くか、何を書くか」(インパクト出版会)が5月30日、刊行された。編者は作家の又吉栄喜さん、大城貞俊さん、崎浜慎さん。若手を中心に小説、詩、短歌、俳句の各文学賞受賞者らに原稿を依頼した。大城さんは「沖縄には優れた表現者たちがいるが、まだスポットが当たっていない。われわれの声を本土に発信したい」と企画への思いを語る。

 第1部では、2022年10月に沖縄大学土曜講座で開催された、沖縄文学を考えるシンポジウムの基調報告やパネルディスカッションを収録した。第2、3部で各分野の書き手の原稿を収めた。

 昨年は又吉さん、大城さん、崎浜さんと山里勝己さんが編者となり、大城立裕さんの追悼論集を刊行した。大城さんは「沖縄を対象にした作品集や論考集などがやまとから出ているが、『沖縄の文学は沖縄側から発信しようじゃないか』と、大城立裕さんの追悼論集に続きこの本を作った。これまでにない画期的な作品集だ」と強調する。

 又吉さんは「沖縄には戦争や祈り、自然破壊、差別など普遍的な問題が詰まっている。沖縄文学はアジア文学でもあり、世界文学でもある。混迷を深める今の時代に、沖縄文学を全世界に普及させる必要がある」と指摘する。今回の出版に「刺激を受けて文学の道に進む人がどんどん出てくるかもしれない」と、「沖縄の文学界をかき混ぜる効果」も期待する。

「なぜ書くか、何を書くか」を編集した(左から)大城貞俊さん、又吉栄喜さん、崎浜慎さん=2日、琉球新報社

 崎浜さんは「沖縄文学は又吉さんや目取真俊さんが芥川賞を受賞した1995年、97年あたりをピークに少し停滞しているが、地道に描き続けている人たちがいる。そうした作家を取り上げ、沖縄文学を盛り上げたい」と話した。

 同書は全国流通。税抜き2500円。

(伊佐尚記)